特集 ―学校教育法改正を入り口に―教員組織をどう活性化するか

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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政府・市場・専門家による総合調整が流動化に関与

 「大学教員の三重苦」の背景にある社会的メカニズムについて、鳥瞰的に整理してみよう。筆者の研究成果に基づいて考えると、大学教員の流動性に関わる四つの調整軸を設定することができる(図表6)。

図表

 具体的には、(1)政府による法制上の調整(2)市場の質的側面(インブリーディング・閉鎖性・分断化)と量的側面(ポストの増減)からの調整(3)各大学による組織的側面(講座制・大講座制・デパートメント制など)と人事的側面(職階比・任期制・公募制など)からの調整(4)アメリカの大学教授審議会、イギリスの各種調整機関などバッファー機関による専門家調整――という軸である。
 これまで教員市場では、インブリーディングや卒業生を送り込む系列化(植民地)大学が批判にさらされた。教授・助教授・助手の比率が1対1対1などに固定されたエントツ型講座制による「ところてん」人事も問題視され、これらが非流動性と「研究しない自由」を招来したといわれる。
 わが国の任期制に一定の節度(歯止め)となる基準がないのは、残念ながら専門家集団が論議する伝統がないからだ。欧米諸国と違い、大学教員が自分たちの身分や処遇の改善について議論する専門家のバッファー機関がなかったり、あっても権威が認められていなかったりする。
 流動性は個別機関のみの改革課題ではなく、政府・市場・専門家集団の総合的な調整機能によって達成されるものである。わが国ではこの点がまったく理解されていなかったが、今回の学校教育法改正をきっかけに、論議の輪が拡大されることを期待したい。


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