特集 ―学校教育法改正を入り口に―教員組織をどう活性化するか

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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送り出した専攻に不利益を生じさせない措置

 東京工業大学では、教授と助教授が1人ずつでペアを組む講座制を採用している専攻は少なく、複数の教授、助教授、助手で構成する大講座制の専攻が多い。東京工業大学ではこれを研究室制とも呼び、助教授が教授と同様独立した研究者として教育・研究活動を担うのが特色だ。教授との差は、「教授人事に口を挟めないことだけ」(三木教授)。
 しかし、今回のような人材交流では、大講座制は不都合なことも多いという。他大学からの派遣教員は、教員を送り出した専攻に配置されるわけではないため、学部や大学院の授業を担当する教員が不足するからだ。助教授でも院生を何人も指導しているので、誰が代わって受け持つかも問題になる。
 そこで、授業については、非常勤講師を3年間雇用する資金を学内予算から工面する。院生の指導は、派遣された教員が時折戻って続けられる場合は、出張費用の支給も検討している。優秀な教員を出した組織が不利益を被らないよう配慮する。
 派遣が教授昇進の条件ではなく、復職後に特別待遇を受けることはない。「外の世界を経験して一回り大きくなって帰ってくることが、本人にとっても大学にとっても最大のメリット」と考えている。
 このプログラムが継続すれば、常に他大学から来た複数の教員が活躍するだけでなく、外の世界を経験した教員も増え続ける。「これまで流動性が乏しく競争原理が働きにくかった教員組織のあり方にも、一石を投じることになる。いずれは他大学や海外の大学との間でも人材交流を進めたい」と、三木教授は抱負を語る。


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