特別企画 著作権法の正しい理解と対策

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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著作権法の正しい理解と対策

入試問題の二次利用で補償金が必要な場合も

2005年4月、大学入試の過去問題集を制作している出版社が、入試問題に引用された作品の著作権者らに「作品を無断で掲載し販売され、著作権が侵害された」という理由で訴えられた。教育に作品を利用する際にも著作権法を順守しなければいけない。どのような認識と対応が必要なのだろうか。

個人の権利への意識が高まる

 大学が、入試問題で文学作品や論文を題材としたり、講義で論文や写真を教材に使ったりするケースは多い。だが、著作権者に連絡して利用の許諾を得ることは、これまでほとんどなかったのではないだろうか。著作権法でも、公表された著作物を入試問題や教材など教育目的で利用する場合、著作権者の許諾を得る必要はないとしている(第三十五条、第三十六条)。

図表

 過去の入試問題を掲載した冊子の出版社に対する訴訟は、著作権に対する教育関係者の意識に一石を投じたといえる。
 なぜ今、著作権なのか。背景として、パソコンやインターネットの普及が挙げられる。時間や場所も選ばず、だれもが著作物を簡単に複製できるようになった。ホームページに複製を掲載することができ、劣化もなく、瞬時に世界中へ配信できる。そのため、他人の著作物をあたかも自分の物のように考えて、複製したり改変したりするケースが出てきたのだ。
 そこで、著作権の保護が主張されるようになった。こうした現状を受け、政府は03年に知的財産戦略本部を設置。国内産業や創作者の利益を保護し、国際競争力を高めるため、知的財産の創造、保護および活用に関する施策の整備に乗り出した。05年4月には個人情報保護法が全面施行された。住所、電話番号や生年月日など個人情報を得た企業が、本人が了解した目的以外の利用のために第三者に個人情報を渡すことを禁じている。
 このように、個人の権利を守るべきだという意識は、社会の常識ともいえるほど浸透している。それが、著作権の保護の問題にも影響を及ぼしている。


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