特別企画 著作権法の正しい理解と対策

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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創作段階で発生する著作権

 そもそも、「著作権」とは何か。著作権法では、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」が著作物であり、「それらを創作する者」が著作者、著作権を譲渡された者や団体も含めたのが著作権者だ。著作権は、複製や上演などの形で、著作物を他者が利用することに許諾を与える著作権者の権利といえる。
 著作権は知的財産権の一つ。知的財産権には、ほかに特許権、商標権などがあり、特許庁に登録しないと所有者としての権利は発生しない。これに対し、著作権は、作曲した音楽を録音したり、考えを文章にまとめたりするなど、他人が認知できる形で創作した時点で発生する。大学でも、開発した技術を特許として申請することがあっても、教授らが書いた論文に関わる権利を、どこかに登録することはない。この点が著作権の特徴であり、著作権者の権利が侵害されやすい要因となっている。
 公表された著作物を入試問題で利用するだけなら、著作権者の許諾を得る必要はなく、出典と著作者名を明記するだけでよい。しかし、営利を目的として入試問題を複製する場合、著作権法第三十六条の2が適用され、問題に利用した作品の著作権者に補償金を支払う義務が生じる。
 著作権に関する講演会やセミナーの開催、著作権者と利用者の許諾契約の代行業務などを行っている有限責任中間法人日本著作権教育研究会の内田弘二事務局長は、次のように指摘する。「オープンキャンパスなどで過去問題集を無料で配布する場合でも、受験生の募集が目的であれば営利目的とみなされる可能性がある。従って、問題で利用した作品の著作権者の許諾を得て、補償料を支払う必要がある」。
 授業の教材は、出典を明示することを条件に、著作権者の許諾なしで利用できる。ただし、多人数の授業での利用は、本来は著作権者の許諾が必要になるという。「人数が多ければ、著作権者の権利が侵害されると判断される可能性が高い」(内田氏)からだ。
 では、何人以上の規模で許諾が必要になるのだろうか。この点については、はっきりとした規定がなく、「状況による判断」に任されているのが現状だ。「あくまでも主観だが、高校などの1クラス分に相当する40〜50人程度が一つの基準になるのではないか。大切なことは、著作物を使われる立場に立って考えること」と、内田氏は指摘する。著作権に対する利用者の意識が重要であり、教育関係者もその向上が求められているといえるだろう。


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