「国際教養」とは何かということが常に問われる。現時点では、「国際」「教養」という独立した内容が並置されているが、将来的には統合された一つの用語・学問領域として確立させる必要がある。ただし、「国際教養学部」における「国際」と「教養」は多様な意味を含むものであり、統合が早急に実現できるわけではない。当面は、「学部」としての組織、制度の確立が急務である。
　国際教養における教養と専門との関係も問題となる。学生は６学期以降、将来の進路・志望に応じて、七つのクラスターのいずれか、あるいは、クラスターを超えた地域研究に集中していく。リベラルアーツ大学でもメジャーとして主たる専攻が想定されており、これは自然な傾向である。しかし、特定の学問分野の専門性を他学部と同じ程度に深めることはできない。本学部の教員が分野のすべてをカバーできるわけではないからだ。それでも、教員が柔軟に対応することで、学生の要望するレベルの専門性に到達させることは可能だろう。
　企業は、専門分野がなく、教養しか学んでいない学生を敬遠するという懸念もあろう。しかし、社会で必要とされる専門性は、日々の業務上発生する問題を処理する中で、自ら深めるものである。学士課程での座学によって修得できるものではない。真に必要な能力とは、新たな課題を発見し、分析し、解決策を提案し、論理的に思考する能力であり、それこそが本学部が旨とする現代的教養である。
　この意味で、本学部の教育こそが、企業が学士課程卒業生に要求するものである。
　多くの学生は日本において就職または進学すると考えられるため、日本語の文章を読み、書く能力が必要となる。しかし、国際教養学部の中に日本語で教育する部分をつくると、学部設置の趣旨が失われる。学内の他学部が提供する授業を履修する制度の整備が必要であり、それにより総合大学の強みを生かすことができる。
　いずれにせよ、国際教養学部の開設は、本学の全学的な教育研究改革のうねりのひとこまなのである。