（1）多様な学生募集で成功

　この２年間を総括すると、全体として成功したと評価できる。複数の入学試験により多様な学生を確保できた。
　例えば、４月入学に関しては、英語のリスニングを含む一般入試、５教科６科目を課すセンター試験利用入試によって、従来の早稲田大学のターゲットである国公私立大学受験生の最上位層を獲得できた。
　英語力を重視するAO国内選考は、スーパー・イングリッシュ・ハイスクールや都道府県が設置した国際科・英語科・国際教養科等の高校で学んだ成績最上位層の受け皿としての地位を確保した。加えて、AO国外選考によって、12月から２月にかけて高校課程が修了する韓国、オセアニア等から優秀な学生を集めた。
　９月AO入試では、６月に高校課程が修了する国内のインターナショナルスクールや、北米、中国、ヨーロッパ等の高校を卒業した学生を確保できた。
　１期生も学習意欲が極めて高く優秀であるが、２期生は、高校時代の成績、入学時の英語能力ともさらに向上した。一般入試による入学者約400人に入学直前の３月末に課したTOEFLの平均点が510点を超えたことは、特筆すべき点である。
　05年度入学生は、合格者の入学手続き率の上昇により755人（男子297人、女子459人）に達した。このうち、約170人が海外の高校課程を修了している。日本人学生には、小中学校時代に海外生活を経験した者、高校時代に海外留学を経験した者も多い。本学部では、海外経験はないが英語が得意だという学生を入学させることを目的の一つにしており、これをどこまで達成できるかが課題である。

（2）海外学習制度の現状

　１年間の海外学習制度の下で現在、１期生約460人が、各種協定を結んでいる27カ国112大学で学んでいる。学生の希望に合致する交換協定・派遣プログラムの一層の充実と、危機管理策の万全の整備とが課題である。英語圏以外の大学で学ぶ学生もかなりおり、今後この比率の増加が予想される。英語以外の言語の学習を支援するプログラムの一層の整備が必要である。

（3）教職員組織と今後の展望

　本学部の成功の要因は、教職員の積極性が引き出されたことである。学部開設までは理事会が主導したが、その後は、学内異動教員と公募で選ばれた教員とが適度に融合し、学部教育について積極的に発言し、関与している。外国人、女性の比率はそれぞれ教員の３分の１を超え、学生の多様性に対応している。加えて、有能で勤勉な職員が学部組織の運営を支えている。
　04年度の現代的教育ニーズ取り組み支援プログラムに本学部の英語プログラムが採択され、科研費の獲得等、外部競争的研究資金の獲得も進んでいる。研究活動の外部への発信も、今後進んでいくであろう。
　海外に開かれた斬新な教育システムに基づき、実験を試みる国際教養学部の開設は、ドメスティックな印象の強かった本学のイメージの転換に貢献した。教養教育を中心とする学士課程と高度専門職業人・研究者の養成を趣旨とする大学院とを区分する本学部の試みは、将来、学部と大学院の関係再編を目指す際には、先導的試みとしての意味を持つであろう。