基幹分野を中心に学科を統合

　工・理工学部は、戦前は殖産興業、戦後は新たな科学技術の創出の担い手を数多く世に送り出し、常に社会に大きく貢献してきた。
　国立大学では理学部と工学部に分かれているケースが多く、私立大学は理工学部として設置しているところが多い。いずれにしても、「理」は応用数理学、「工」は機械、電気、応用化学、土木・建築という基幹分野を軸として設置された点は変わらない。
　1960年代の高度成長期を経て科学技術が飛躍的に発展したことで、工・理工学部の扱う分野は大幅に拡大した。材料工学、航空宇宙工学、経営工学、生物工学といった新たな領域の学科が続々と開設された。その後、90年代以降のコンピュータ技術の急速な進歩は、情報科学・情報工学という新たな学問領域を生み出し、多くの大学に情報系の学科が置かれるようになった。現在では、この分野で10近い学科を擁する大学も珍しくない。
　しかし、学科をあまりにも細分化しすぎたことで、かえって現代の技術革新や社会の要請に即応することが難しくなった。次世代の技術を生み出すためには、一つの学問領域だけでは対応しきれず、複数の分野の連携が不可欠となっているからだ。
　こうしたことから、ここ５年ほどの間に、工学部や理工学部を再編成する大学が相次いでいる。いくつかの例に共通するのが、基幹分野を軸に学科を統合する動きだ。東北大学では、04年度に、17学科を機械知能・航空工、電気情報・物理工、化学・バイオ工、材料科学総合、建築・社会環境工の５学科に再編した。北海道大学も05年度に、12学科を応用理工系、機械知能工、環境社会工、情報エレクトロニクスの４学科に再編するなど、国立大学でこの動きが目立つ。
　逆に、私立大学では、一部の学科を学部に昇格させたり、新しい学科をつくったりして、学部・学科数を増やす動きが目立つ。学部を新設する大学の中には、東海大学のように、情報系の学科を学部として独立させるところも多い。ＩＴの進歩によって、情報系の分野が拡大したために、独立性のある方が、教育・研究だけでなく、学生募集の面でもメリットが大きいのだろう。