「情報に特化した教育」を前面に

　東海大学は、01年度にいち早く情報系の学部である電子情報学部を開設した。その電子情報学部を06年度から情報理工学部に改組する（図表２）。なぜ、わずか開設５年で改組するに至ったのか。
　情報理工（現・電子情報）学部長の中下俊夫教授は、「大きな誤算は、電気電子工学科と同時にエレクトロニクス学科とコミュニケーション工学科を開設したこと」と言う。
　「開設当時は、ＩＴブームで情報系の人材が不足していた。電子情報系で電気電子工学やコミュニケーション工学を学ぶ意義は高く、社会の評価も得られると判断した。しかし、その後、やはり工学部に基幹分野の一つである電気工学系の学科がないのは、工学のすべての領域をカバーするという学部の意図に反する、という声が多数を占めるようになった」
　そこで、今回の改組では、電気電子工学科を工学部に移すとともに、エレクトロニクス学科とコミュニケーション工学科は廃止する。「エレクトロニクス学科という名称では、範囲が広すぎて、何を学ぶのかがわかりにくい。コミュニケーション工学科は、情報通信分野の学科であることが、この名称からはうまく伝わらなかったようだ。コミュニケーションという言葉自体、文系の学科という響きが強く、文系と理系の境界線が曖昧だったのかもしれない」（中下教授）。

組み込みソフトの専門技術者を養成

　情報理工学部には、新たにソフトウェア開発工学科と情報通信電子工学科が開設される。
　ソフトウェア開発工学科は、組み込みソフトウェアの専門技術者を育てるのが最大の狙いだという。組み込みソフトウェアとは、携帯電話、産業機器、家電製品や自動車などに内蔵され、マイクロコンピュータを制御するソフトウェアの総称だ。今後の産業における国際競争力強化のカギになる見通しだが、専門家は極端に不足していて、専門外のエンジニアが担当している状況だという。「だからこそ、この学科を立ち上げる意義は大きい。日本の組み込みソフト開発者育成のフロンティアを目指す」と中下教授は抱負を語る。
　情報通信電子工学科では、情報通信技術とエレクトロニクスを融合して学び、次世代情報通信ネットワークの構築技術やＬＳＩ（大規模集積回路）の開発技術などを身に付ける。同学科では、主専攻科目を情報通信・ネットワーク系、コンピュータ・情報処理系、エレクトロニクス・電子デバイス系の３系列に分類。この中の一つの系列に重点を置きながら、周辺分野の科目も体系的に学ぶことができる。
　東海大学では、工学部にも新学科が開設され、第二工学部も情報デザイン工学部に生まれ変わる。
　工学部には、電気電子工学科が設置されるほか、これまで応用理学科の中に置かれていた光工学、エネルギー工学の２専攻が学科に昇格、光・画像工学科とエネルギー工学科となる。さらに、航空宇宙学科には、ＡＮＡ（全日本空輸株式会社）の全面協力の下、プロのパイロットを養成するわが国初の航空操縦学専攻が設けられる。
　第二工学部は機械工学科を廃止し、情報システム学科と建築学科の２学科編成による、情報とデザインに特化した学部となる。