ＳＦＣの入学者を待ち受けていたのは、「問題発見・解決型」の教育だった。新しい問題にぶつかった時に、問題の本質と、それを解決する方法を見つけられる人材を育てようというのが、ＳＦＣ創設の理念である。文理融合、研究プロジェクト中心のカリキュラムなどの具体策を打ち出した。
　こうした、前向きで誰でも飛びつきたくなる言葉は、一時的な流行語として世間を飛び交っても、中身はチェックされることなく忘れ去られてしまう。
　しかし、ＳＦＣ内部ではそうではない。環境情報学部長に就任して間もない冨田勝教授は、「今こそ、当初の目標を実現したい」と話す。16年前に提示した問題発見・解決型の人材を育成するという考え方は、混迷の時代を見越した的確なものだった、と信じている。ただ残念なことに、その理念が十分にカリキュラムに反映されていたわけではなかった、というのだ。カリキュラムを思い切って変えれば、やれると考えている。
　「問題を発見し解決できる力を育てるには、好きな研究プロジェクトに取り組ませるのが一番。教育で大切なのはモチベーションだ。面白い、と思ったら学生は夢中になって勉強する」と、冨田学部長。「研究プロジェクトは試験勉強と違って正解がない。教員や仲間の学生と一緒に試行錯誤することはとても楽しい。基礎知識や技術も目的達成のために必要だと思えば、自分で進んで勉強するようになる。だから、カリキュラムは卒業制作だけを必修にして、あとはなるべく自由に選択できるようにすればいい」。