設立10周年の記念誌を読むと、ほとんどの事業が成功していることに舌を巻く。研究者データベースにしても、当初は協力する教員が少なく、大学を困らせた。研究内容と実績を公表するのは当然のはずだが、教員の意識が遅れていたのだ。それを、「京都中の大学が一斉にやるのだから」と、コンソーシアムの存在が説得の材料になった。教員の意識改革という表に出てこない部分も含め、コンソーシアムが果たした役割はもっと評価されるべきだ。
　その後、教員はコンソーシアムの事業に協力的になり、京都の大学の間で不協和音が高まっているという批判は聞こえてこない。小さな大学の中には、教員が事業に参画することで刺激を受け、視野が広がるという効用もあるようだ。それを評価する経営者もいるという。
　05年には、新たな事業に向けて二つの機関を設けた。京都高等教育研究センターは、高等教育の実態に関する調査・情報収集やＦＤ研究を行う。京都学術共同研究機構は、京都の都市政策課題を研究し、地域に還元する。
　しかし一方で、今回の取材を通して、コンソーシアム京都の改革を評価する基準は何かという問題にも直面した。現在、われわれが評価している基準の高さでいいのか、という反省でもある。例えば、単位互換事業で単位を修得するのは毎年１万人、京都の学生の16分の１である。これでは、個別大学が行ってきた教養教育を肩代わりしているとか、大学運営を専門教育にシフトできている、とはいえない。
　科目をどの程度開放するかは、各大学に任されている。それぞれ自信を持って出すだけあって、水準の高いユニークな科目がそろい、全体として質の高い教養科目になってはいるが、数はなかなか増えない。さらに、学生を送り出す側の大学が、履修科目の数を制限する。一人につき最大で２、３科目というのが普通だという。これでは、学生は他大学の授業のにおいをかぐ程度で終わってしまう。しかも、英語など必修科目の履修は認めていない。
　これは、教養科目の教員たちがポストを失うことを心配しているからだと説明する人もいる。いずれにせよ、目には見えない何かがコンソーシアム京都の前に大きく立ちはだかっているのは、確かなようだ。それを克服する必要があるのかどうかは、コンソーシアム自身が判断しなければいけない。