京都の伝統的な仏教系大学である大谷大学文学部には、基礎演習に相当する1年次の必修の授業として「学びの発見」がある。この授業のねらいは、大学での学び方に慣れることで、アイデアの出し方・絞り方・まとめ方のグループワークとレポート作成、および発表の実践を指導する。
さらに、導入科目の延長として1・2年次を対象とした、「自己表現の技法」と「読んで話そう」という授業がある。前者は「学びの発見」を発展させた授業であり、後者は学生に同学部のリテラルカルチャーの基本に立ち返ってもらうため、本の背景を自分のスタイルで読み取らせることをねらいにしている授業だ。課題図書は自由に選べるが、「不思議の国のアリス」「ガリバー旅行記」「シャーロックホームズ」「京都人は日本一薄情か」など多岐にわたる。
受講者の中には、この授業をきっかけに、書物と自分の関係を再発見する学生が多い。この一連の授業の効果は劇的に表れるものではないが、新入生はこれらの授業を通して仏教の世界の魅力や奥深さ、自分がどのように伝統仏教系大学と付き合ったらよいかに気付くようだ。また、基礎演習に出席することによって、明らかに不登校気味だった学生が大学の学問の世界に近づいてくる、という効果が見られた。
大谷大学の取り組みは、大学文化を眠りから覚ますことによって、導入教育の効果が上がる例と考えたい。
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