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Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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基礎演習の成否の鍵は「大学文化」にある

 効果を得やすいのはスキル系の授業で、スキルを外部業者にアウトソーシングすることも選択の1つだ。細かいコース内容は学生のレベルや専門の系統によって異なるが、学生同士の交流など、副次的なねらいも重要である。
 基礎演習の成否の鍵は、見えて管理できる教育にではなく、見えないところにあると気が付いている大学は案外少ない。見えないところにあるのは、「大学文化」と呼ばれる大学機能のことだ。つまり、大学のプラスアルファの教育力である。大学文化による教育機能の重要性を認識せずに、そのねらいを見える成果に単純化した基礎演習を行うことは、導入教育が矮小化されて、実を結ばない。
 大学文化の在り方は多様だが、ここでは3肢の類型に分けて述べる。
 第1に、地域と大学が融合して文化を共有している、伝統ある都市型の大学で、ここでは「伝統都市型大学」と呼ぶ。教員もこの地域に居住して、地域社会に貢献している場合が多い。
 第2に、地域と大学が分離した大学で、「移転型大学」と呼ぶ。この大学は、人工的な地域計画による移転で、移転先の地域社会と融合できていない。地域社会は大学文化とは異質の文化を持ち、学生も教員も地域社会に根を張っていない。また、地域社会も大学からの直接的な恩恵をあまり受けていない。移転型大学の中には、大学自体も大学文化をまだ醸成できていない新設10年程度の大学も含まれる。
 第3に、「新設・改組大学」だ。この大学には2パターンがあり、1つは新設後間がなく、主に看護や福祉といった資格課程を中心にした大学、もう1つは女子大から共学化したり、短大が改組したりした大学である。これらの大学には、大学文化がまだ十分に備わっていない。
 これらの3肢の類型に対する導入教育のポイントを、筆者らの実践から探ってみたい。


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