大学と協定校は随時連絡会を開催し、プログラムの実施に関する点検、受講生や入学者（協定校卒業者）の学習生活実態や成績実態についての情報交換、その他の意見交換を進めている。「文学部協定校連絡会」では、卒業生である１年生の前期成績データを、名前を伏せて各校に配付した。責任者である本学文学部の朝尾幸次郎教授から次のような説明があった。
　「グラフを見ていただければ、協定校プログラムを経て入学した学生の評定平均値は、全体をやや上回っていることが分かります。皆さんが優秀な卒業生を送ってくださったおかげです。お手元の封筒には個別の成績データが入っています。そこに、全体でほんの数人ですけれども○点を下回る点数の学生がいます。学習に困難を抱えている可能性がありますので、先生方におかれましても少し注意していただくようお願いします。ただし、大学に来なくなっているような学生は１人もいないのでご安心ください」
　連絡会終了後には、成績不振の卒業生がいた高校の教員から、今後の入学者の推薦の在り方について相談があった。そもそもこのプログラムのねらいは、ミスマッチのない進路選択を保障し、入学後には一般入試による入学者とはひと味違った能力や個性を発揮してもらうことにある。無理な入学は何よりも学生本人にとって気の毒なので、そのようなことがないよう、本学で高校と綿密な連絡・協議を進めている。１年次前期の成績は、ちょっとした「つまずき」があったり、サークル活動など教科以外のことに熱中したりすると低くなることがある。そのことで一喜一憂するのではなく、系統的に長い目で学生の成長を確認していかなければならないと考えている。
　卒業生たちの成績が全体平均に比してやや低めだった高校の教員からは「３年後の協定更新の際に入学者の成績が重視されるのか」という趣旨の質問を受けた。もちろん、成績は学生の学びの反映であるから成績が良いに越したことはないが、在学中の成績はあくまで「学びのプロセス」におけるアウトプットの一つの指標にすぎない。重要なのは「卒業時の学力保証」であり、卒業後に社会で活躍できる力である。「高校在校時から大学卒業後までを見据えた人材育成」に、高校と大学が連携して責任を持つところに協定校プログラムの眼目がある。
　同じ生徒・学生を挟んで高校と大学が共に対等なパートナーとして彼／彼女らの進学の選択に責任を持ち、入学後の実態を把握しながら、プログラムを絶えずブラッシュアップする。果たして、本学および協定校が生徒・学生の能力や個性を適切に伸ばしているかを点検していくのである。
　本学は、多少双方の負担が重くても、そのことに教育・研究の両面で意義を見いだしてもらえる高校との連携を深め、先進的なプログラムの開発・推進・点検を進めていく方針である。