中央教育審議会が「初等中等教育と高等教育との接続の改善について」を答申したのは1999年12月であった。答申では初等中等教育（主に高校）と高等教育（主に大学）が連携し、入学者選抜だけでなくカリキュラムや教育方法なども含めた全体の接続の在り方に対する改革の必要性が強調された。答申から８年が経過し、一人ひとりの生徒・学生の能力と個性に応じた進路選択を支援する観点から、「高大接続」「高大連携」が重要という認識は教育現場、関係諸機関も含めて共有されてきている。特に高校では、大学教員による出張講義を取り入れる企画が定着した。そして、いっそう深い「高大連携」の在り方が模索されている。
　本学の協定校プログラムは、2002年度に「高大連携推進室」を設置して以来、本学が５年間取り組んできた事業の一つの到達点を示していると自負しているが、本学ではほかにも多様な企画や事業を推進している（図２）。

　「高校と大学の教員との交流・連携に関わる事業」は、高校、教育委員会、関係機関や高校教員と本学とのネットワークづくりが目的である。高大連携をめぐる政策動向を正確に把握し、高校現場や高校教員のニーズをつかみ、充実した高大連携に結び付けたいという意図がある。大学と関係者のネットワークをベースに、様々な共同研究や協議を積み重ね、機が熟すれば協働で進める事業を企画する。特に自治体との連携の経験は、地域に根差した企画を進める上で有益である。
　例えば、スキルアップ講座は大阪府教育委員会からの依頼を受けて開発したプログラムであり、神戸市教育委員会とは多様な協働の取り組みを経て、神戸市立高校全校を協定校とする協定校プログラムの実施にまで関係が強まっている。これらは地味ではあるが、本学の高大連携企画を前に進めるエンジンの役割を果たしている。
　「高校生等を対象とする学習機会の提供に関わる事業」は、一般にイメージされる高大連携講座である。また、様々な特別入試を経て早期に合格した者を対象に、高校在校中から入学準備の学習を進めてもらう仕組みもある。