調査分析

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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 分析結果:大学の「教育力」向上のための取り組み状況

大学の「教育力」を高める取り組みの実施率と
検討率から見えた情報の共有化の重要性

教育力向上のための取り組みとして挙げた全30項目の平均実施率は57.3%であった。
大学が様々な施策に着手していることがうかがえる。
成功事例や情報を共有するために、大学間を結ぶ組織の整備が期待される。

実施率が低い取り組みは実施検討率も低い

 図5は、教育力を向上させるために、大学がどのような取り組みをしているのかを示した結果である。
 現在、実施している取り組みで最多だったのは「学生による授業評価アンケートの実施」で、96.5%と数値は高い。しかし、図6を見ると、教育力向上に対する効果はそれほど大きくない。効果的に活用する工夫が望まれる。
 「公開講座の実施」をしている大学が多いのも目立つ(図5)。「地域イベントへの参加」も実施大学が多いという結果と併せて考えると、地方分権時代にあって、地域の高等教育機関である大学に寄せられる期待に、大学側がきちんと応えている結果ではないか。
 一方、現在の実施率は低いが「今後の実施を検討している」という数値が高い施策には、「GPA制度の導入」「インターネットを利用したオンデマンド授業」がある。両項目とも、実施大学に絞った場合の教育効果の数値が、全体の数値より10ポイント以上高い(図6)。実施すれば成果が得られやすい取り組みと考えられる。
 では、実施が進まない背景には何があるのだろうか。一つに、成功事例が共有化されにくい点が挙げられる。実施校数が少ないため、どのような成果が得られるのかが見えにくい。実施しても効果が得られないことを懸念しているのかもしれない。こうした状況は、GPA制度やオンデマンド授業に限らない。新しい取り組みの実施には、二の足を踏みがちである。
 今は情報共有化が当たり前の時代である。特色GP、現代GP、21世紀COEプログラム等に採択された取り組みには予算が付く一方で、情報の公開が義務付けられている。また、個別大学だけでの取り組みは予算的に難しいケースもある。研究に限らず、教育関連の取り組みについても事例や情報を共有できるような仕組み、例えば教育センターの連携を整備することや、学協会の役割が期待される。同時に、情報を共有しようという教職員の意識を高めることも必要であろう。

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図表
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