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Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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つの方針の結合

質の高い学士課程教育の実現に向けて

中央教育審議会大学分科会制度・教育部会が2008年3月に出した「学士課程教育の構築に向けて(審議のまとめ)」では、「アドミッション・ポリシー」「カリキュラム・ポリシー」「ディプロマ・ポリシー」を明確にし、それぞれを連携させることの重要性が明示された。
各ポリシーの確立には、多くの大学が取り組み始めているが、まだ、それぞれの有機的なつながりが確かな大学は少ない。
本特集では、この「3つの方針」の重要性を再確認するとともに、結合のあり方、それぞれのポリシーの明確化について考える。

 はじめに

大学の個性化に向けて重要な
「3つの方針」を策定するために

今、なぜ「3つの方針」が求められるのか。まずは、中央教育審議会の答申などで方針の策定、および「3つの方針」に基づいた教学経営の必要性が説かれているからだ。さらには、改正された大学設置基準においても、方針の明確化が重視されている。大学はどのように「3つの方針」を策定・結合し、運用していくべきなのだろうか。

「3つの方針」の策定が求められるまでの経緯

 2005年1月に公表された中央教育審議会の「我が国の高等教育の将来像(答申)」で、アドミッション・ポリシーの明確化、教育課程の改善、出口管理の強化などが求められた。さらに、2008年3月の「学士課程教育の構築に向けて(審議のまとめ)」では、「3つの方針」に貫かれた教学経営を行うことが肝要であると説かれた。策定にとどまらず、3つのポリシーを統合した実質的な運用が求められていることが分かる。
 また、(独)大学評価・学位授与機構の「大学評価基準(機関別認証評価)」では、教育研究活動の基本的な方針や養成しようとする人材像の明確化、アドミッション・ポリシーの明確化・公表・周知などが行われているかどうかが問われる。
 2007年度に改正された(2008年度から施行)大学設置基準においては、学部、学科または課程ごとに、人材養成に関する目的や教育研究上の目的を学則に定め、公表することが義務付けられるようになった。これも、「3つの方針」に深くかかわるといえる。

「3つの方針」は高等教育機関の個性・特色の根幹をなす

 どのような学生を受け入れて、どのような教育を行い、どのような人材として社会に送り出すかは、その高等教育機関の個性・特色の根幹をなすものである。各機関は、入学者受入方針(アドミッション・ポリシー)を明確にし、入学志願者や社会に対して明示するとともに、選抜方法の多様化や評価尺度の多元化の観点を踏まえ、実際の選抜方法や出題内容等に適切に反映していく必要がある。また、大学は国内外の環境の変化や激しい競争にさらされることから、このような努力を通じて、次の世代を担う者に対し、各人が学んでおくべき内容を示すという機能を果たすことも期待される。
 入学者受入方針に加えて、教育の実施や卒業認定・学位授与に関する基本的な方針(カリキュラム・ポリシーやディプロマ・ポリシー)についても、各高等教育機関が(必要に応じて分野ごとに)明確にすることで、教育課程の改善やいわゆる「出口管理」の強化を図っていくことが求められる。


出典:中教審「我が国の高等教育の将来像(答申)」第2章より一部抜粋

明確な「3つの方針」に貫かれた教学経営を行うことが肝要

 我が国の学士課程教育の抱える課題、社会的な要請の高まりを踏まえると、各大学に求められる事柄を端的に言うならば、「社会からの信頼に応え、国際通用性を備えた学士課程教育の構築を」実現すべきということになる。当部会としては、この目標の実現に向けて、以下のような改革の実行を期待するものである。
 これらの改革の実行に当たっては、明確な「三つの方針」に貫かれた教学経営を行うことが肝要である。大学の個性・特色は、各機関ごとの学位授与の方針、教育課程編成・実施の方針、入学者受入れの方針(将来像答申の述べるディプロマ・ポリシー、カリキュラム・ポリシー、アドミッション・ポリシーに対応)に具体的に反映されるものである。教学経営に当たって、「三つの方針」を明確にして示すこと、そして、それらを統合的に運用し、共通理解の下に教職員が日常の実践に携わること、さらに計画・実践・評価・改善(PDCA)のサイクルを確立することが重要である。


出典:中教審大学分科会制度・教育部会「学士課程教育の構築に向けて(審議のまとめ)」第2章より一部抜粋


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