３つのポリシーは、大学から高校へどのように発信されているのだろうか。最も多いのは文書や訪問によるものであり、進路指導部の教員が応対する。ダイレクトメールが１日平均30通近く届き、高校現場では、これらの整理だけで精一杯である。
　さらにここ数年、大学からの訪問回数が急増している。以前は入試課の職員の訪問が中心だったが、今は大学の先生が中心となっている。ただ、先生ご自身の属する学部に関するポリシーについてはよく伝わってくるのだが、入試に関しては十分理解されていないことが多い。ましてや、ほかの学部・学科のことは全くご存じないという場合もある。高校教員に直接伝えられるせっかくの機会を生かし切れていないのが現状である。

　高大連携による種々の機会をとらえての高校への情報発信は非常に有効に働いている。なぜなら、対象の教員が進路指導にかかわる教員のみならず、校内の全教員となるからであり、時間をかけて新しい学問研究や大学教育の様子を知得できるからである。
　筆者も現在、科学研究費補助金（科研費）制度による共同研究や物理教育学会での活動を通し、多くの大学の先生方と連携する中で、大学が発信する３つのポリシーを知る機会に恵まれている。高校教員にとっても自分の教科にかかわる高大連携は教科指導力の向上にも役立ち、日々の授業の中で生かすこともでき、結果として個々の生徒へ自然な形で大学の情報が伝わる。
　具体的には、近年増加している○○コンテストなどの大学主催の事業、高校教員向けの教科・教養ゼミナールやサイエンス・パートナーシップ・プロジェクト、科研費制度の共同研究等である。これらは一方向的な連携ではなく、双方向の連携を可能とする。大学にとっても高校教育を理解する機会となり、高大教員の出会いの場ともなる。連携の輪が広がる絶好の機会でもある。
　高校や大学の教員一人ひとりが連携の輪を広げれば、高校にとっては多くの大学のポリシーを理解することになり、大学にとっては伝達できる高校が増加することになる。そして、ポリシーは確実に高校に届き、生徒の状況に応じた形で、種々の場面を通じてそれぞれの高校内でそしゃくされて、明確化される。時間はかかるだろうが、３つのポリシーの浸透が高校内で図られることになろう。