「学園戦略」の代表的な取り組みは、付属校の設置などによる一貫教育の強化だろう。
　「学園」と聞くと、首都圏では玉川学園を思い浮かべる人がいるかもしれない。「全人教育」を掲げ、幼稚部から大学までを持つ伝統的な学園だ。2006年４月からは、幼稚園、小学校から高校までにあたる12年間を「一つの学校」としてとらえた一貫教育「玉川学園Ｋ-12」を実施している。2007年４月には国際学級を開設し、７年生（中学１年生）から日本語と英語によるバイリンガルの教育を開始。「世界に通用する『人づくり』」に取り組んでいる。
　このように伝統校が一貫教育を強化する一方で、近年、目立つのは付属校を増やす動きだ。
　首都圏では、中央大学が2008年２月、横浜山手女子学園の横浜山手女子中学校・高校を付属校とするための協議会の設置を発表した。法人の合併についても検討中だ。2010年度には付属高校との中高一貫教育を前提とする付属中学校の開設を予定している。慶應義塾大学は2011年に横浜市青葉区に小中一貫校（初等中等教育校）を開設すると発表した。
　早稲田大学は2010年度に早稲田大学高等学院に付属中学校を開設する方針だ。また、2009年度に大阪府の摂陵中学校・高校、2010年度に早稲田佐賀中学校・高校（仮称、設立準備中）を系属校とする。同大学は附属・系属校プロジェクト室を設置し、中高大一貫教育のあり方を検討する。
　そのほか、青山学院大学は相模原キャンパスに付属中高一貫校開設、日本大学は2009年度に付属藤沢高校との中高一貫教育を行う付属中学校の開設と、続々、計画が発表されている。
　近畿圏では、他法人との統合による付属校化の動きが顕著だ。関西学院大学は中学校・高校を有する千里国際学園との法人合併を検討。関西大学は北陽高校を付属校化、2010年度には大阪府高槻市に初等・中等・高等部を新設する予定だ。立命館大学はすでに立命館宇治中学校・高校、同慶祥中学校・高校、同守山中学校・高校の付属校化を実施し、各地に中学校・高校を開設している。小学校・中学校・高校を持つ大阪初芝学園との連携協議も開始した。京都産業大学、龍谷大学もそれぞれ中学校・高校を付属校に加えている。
　中部地区では、南山大学が2008年４月に付属小学校を開設した。英語教育、食育、アート教育などに特色がある。卒業生が全員、無条件に付属中学校に進学できるわけではないが、推薦制度の充実により小中高大の一貫教育を実現しようとしている。