常磐大学は2000年にコミュニティ振興学部を設置し、「まちづくり」を最も重要なテーマとして位置付けて研究・教育を重ねてきた。2005年からは、大学の位置する周辺の５市１町（水戸市、笠間市、桜川市、那珂市、日立市、茨城町）と順次、連携協力協定を締結。さらに、2008年には「地域連携センター」を開設し、連携をスムーズにかつ充実させるため窓口を一本化した。
　「地域貢献のために大学ができることは大学の積極的な開放」として、地域交流の場の提供、教育資源の投入を惜しみなく行う。
　先駆的な取り組みには、2008年５月に発足した「自治制度研究会」がある。茨城県内の市町村の職員が参加し、県外の先進的な自治体の例を学んだり、それぞれの課題を持ち寄ってノウハウや意見を交換したりする場だ。高木学長は「都道府県職員を対象とした研修・教育機関はあるが、市町村職員を対象としたものはない。周辺自治体と連携協定を結んだ本学なら、近隣の自治体が一堂に会し、課題解決策を見いだせる場を提供できる」とねらいを話す。
　読売新聞社と共催し、大規模な「連続市民講座」も開く。「地域社会の安心・安全・安定を考える」をテーマに、2008年度に全13回、同大学の教員が講演する。４月に開かれた第１回の講座には200人余りが参加。主婦から高齢者まで、普段、大学に足を向けないような幅広い年齢層の市民がキャンパスを訪れた。　
　自治制度研究会、連続市民講座の開催は、地元紙に大きく取り上げられた。広告ではなく「報道」という形によって大学名がメディアに露出することは、地域へのアピールに大きな効果があるととらえている。
　地域における存在意義の向上において、学校法人常磐大学が課題とするのは、20代から40代までの子育て世代へのアピールだ。これから中学校、高校、大学に通う子どもを持つ保護者に、同法人が設置する各学校を知ってもらうことは重要だが、育児や仕事に忙しい世代のため、アピールにも工夫が必要になる。
　そこで、水戸市の中心街にある百貨店に一時預かり保育室「常磐大学ナーサリーPopo（ポポ）」を開設した。スタッフはすべて常磐短大幼児教育保育学科の卒業生。常磐大学幼稚園で培ったノウハウを生かす。
　また、常磐大学が学内に設置する「心理臨床センター」では臨床心理士らによるカウンセリングを実施。一般のカウンセリングも受け付け、いじめや家族の悩み、高齢者介護の問題など、様々な相談に乗る。

　開学100周年記念行事の一つとして、2009年８月、常磐大学を会場に「第13回国際被害者学シンポジウム」が開催される予定だ。同大学では、1983年の開学以来、当時、日本が世界に後れを取っていた「被害者学」の教育・研究に力を入れてきた。現在ではアジアにおける被害者学の拠点と認知され、国費留学生も多く在籍する。
　同シンポジウムの招致に際しては、テーマとして『アジアの被害者学』を提案。研究実績、ならびにテーマ設定が評価され、会場に選ばれた。諸澤理事長は「アジアの代表的な存在の大学になることによって、学内ではグローバルな学びが広がり、学外に対しては大学の特色として強くアピールできる」と、シンポジウム開催の意義を語る。
　また、高木学長は、「学士課程教育では『人間形成』が最も重要であるととらえ、リベラルアーツ教育にさらに力を入れる。そのためには地域の力が欠かせない」と強調する。
　教育は学校だけで行うものではなく、地域の人々の協力なくしてはありえない。地域の人々に学校に対して関心を高めてもらうようにすることは、入試広報のためだけでなく、教育の質の向上においても重要である、と位置付けている。
　開学100周年を好機ととらえ、地域貢献を加速している学校法人常磐大学。今後も様々な取り組みが計画されているが、そのすべてが地域での存在意義の向上につながっていく。