2005年度ベストティーチャー賞受賞

谷和夫

横浜国立大学大学院工学研究院人もの空間のシステム分野教授

PDCAサイクルを取り入れた授業改善

　「教育とはサービスである」というのが私の考えだ。授業料への対価として教育サービスを提供する以上、教員は学生の満足度の向上に向けて、授業を改善し続けなくてはいけない。その方法として、PDCAサイクルを重視している。
　私は、常に２つのPDCAサイクルを意識している。１つは「年間」、もう１つは「毎回の授業」でのサイクルだ。年間のサイクルでは、最初に到達目標を設定し、各期の授業の冒頭で学生に対して具体的に説明する。授業評価アンケートが導入されてからは、その内容に沿って目標を設定している。
　15回の授業が終わると、授業評価アンケートの結果を通して学生の感想や要望を把握し、次年度の授業に反映させる。私の場合、学生の反応を見て、年ごとに２割ほどの内容を新しくするイメージだ。また、各期に必ず１度は授業を録音し、話す速度や話し方などを確認している。
　卒業研究については、学内統一の授業評価アンケートが行われないため、独自に年間目標を定め、授業評価のアンケートを行っている。年間目標は、コミュニケーション能力や語学力など、社会に出てから求められる能力が基本となる。そして、年度末に「英語を『読む・聞く・話す・書く』能力は十分に指導したか」など目標に対する質問を設けた「評価カード」を学生に渡し、到達の度合いを５段階で記入してもらう。さらに、学生一人ひとりと面接をして、直接意見を聞いている。
　毎回の授業では、「予習テスト」が授業改善に役立っている。授業終了後、次回の予習の範囲を示し、毎回、授業の冒頭に実施する小テストで予習の成果をチェックする。これにより、学生の理解度や熱意が分かる。自由記述欄は学生の本音を知る貴重なツールとなっている。
　そのほか、「シャトルカード」という伝言カードも導入している。授業後、学生に感想などを書いてもらい、コメントを添えて返すというもの。このカードを通し、授業が分かりづらい、面白い、退屈といった感想や、板書や話し方などへの反応が手に取るように分かる。ただし、非常に手間がかかるため、各科目につき３年に１回のペースで行っている。
　教育の成果は社会に出てから試される側面が強い。そこで、現在、卒業生や学生の保護者に感想や要望を聞いて、授業改善に結び付ける方法を検討している。