調査企画

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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はじめに

学生個々の資質が
大学に対する満足度に大きく影響している

大学への満足度は10年前の調査結果と比較して向上していたが、依然として低い項目がある。 課題を分析したところ、学生の「社会性」と「自我」の確立度が満足度を左右することが分かった。

「社会性」と「自我」の確立度は大学の難易度と無関係

 本調査では、大学教育についての満足度を測定し、7つのカテゴリー(大学全般、施設・設備、進路支援の体制、教員、授業・教育システム、後輩への勧め度、人間的な成長の実感度)に分類している。10年前の1997年調査と比較すると、7カテゴリーすべてにおいて満足度が向上していた(次ページ図2)。大学を取り巻く環境の変化を受けて、各大学が教育内容の充実を図ってきた成果が表れたといえる。
 しかし、満足度の数値自体を見ると、カテゴリーによってばらつきがあった。「大学全般」の満足度、「人間的な成長の実感度」は約50%の学生が肯定しているのに対し、「進路支援の体制」「教員」「授業・教育システム」といった教育内容に関する満足度は30%程度にとどまった。
 何を改善すれば、学生の満足度は向上するのだろうか。本調査では、分析尺度の一つである「IPS尺度」に着目し、検証した。
 IPS尺度は、自我の同一性に関する質問を利用し、「社会性」と「自我」の確立度に基づいて4類型(達成、社会、自我、途上)を設定したもの。社会性と自我の両方が高い学生は「達成型」で、意図的学習が成立している望ましいタイプといえる。社会性と自我が共に低い学生は「途上型」で、意志が漠然としていて他者依存が強いタイプだ。
 この「社会性・自我の確立度」と「学力」とは相関関係がない。本調査にかかわった245校の4類型の分布を見ると、集団として達成型に属するのは100校、社会型は47校、自我型は37校、途上型は61校だった。達成型には入試難易度の高くない大学があり、途上型には入試難易度の高い大学も含まれる。
 学生をひとくくりにとらえず、4類型に分けて調査結果を分析したところ、学生の満足度向上のカギが見えてきた。分析では、入試難易度と満足度に相関は見られず、むしろ、IPS尺度の違いによって満足度に差が表れた。

図

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