調査企画

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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結果分析

大学に対する学生の満足度の特徴を
アイデンティティの確立度から見る

学生の資質によって満足度を分析すると、社会性と自我が確立された学生と、そうでない学生との間に、
明らかに満足度の差が見られた。ここから学生の満足度向上のカギは何かを検証する。

IPS尺度別満足度とイメージギャップ

図

 図2は、1997年と2007年の「大学総合満足度」をIPS尺度の4類型別に比較したものだ。
 両年とも、社会性・自我の確立度の高い「達成型」は全体的に満足度が高く、社会性・自我の未成熟な「途上型」は全体的に満足度が低い。達成型と途上型の満足度の差は顕著に表れている。例えば、「進路支援の体制」に対する満足度は、達成型の34.5%(2007年)に対して途上型は16.4%(同年)と、両者には2倍以上の格差がある。ほかに、「教員」「授業・教育システム」でも約2倍の格差が表れた。
 さらに注目したいのは、1997年と2007年との比較において、達成型と途上型の満足度の差が、すべての項目で広がっていることだ。経年変化を見ると、4類型すべてで満足度は向上しているが、中でも達成型はより満足度が高まっている。

図

 このような達成型と途上型の格差は、大学入学後のイメージギャップにも表れている。
 図3は、大学入学前に描いていたイメージと現実の学生生活とのギャップについて、その結果をIPS尺度の4類型別にし、1997年と2007年とで比較したものだ。
 経年変化を見ると、図2の満足度と相反するように、イメージギャップが発生している割合は、すべての項目で減少している。10年前に比べ、大学に関する正確な情報が、入学前に受験生に届くようになったためではないかと考えられる。
 ただし、IPS尺度の4類型別で見ると、途上型は全体的にイメージギャップの発生率が高く、一方、達成型は少ない。イメージギャップは満足の対極にある不満の要因と考えられる。つまり、途上型は学生生活に不満を抱いている割合が高く、達成型は学生生活に満足している割合が高いという、満足度と同様の傾向が見られた。
 満足度の場合と異なる傾向としては、イメージギャップについては、達成型と途上型の差が経年によって必ずしも広がっていない。おそらく、大学からの情報はどの類型の受験生にも効果的に伝わり、入学後に「イメージどおり」と感じられているのではないだろうか。
 図3では、次の2点にも注目したい。1つ目は、「キャンパスライフ不適応」と「授業に欲求不満」で、途上型が群を抜いてイメージギャップを感じていることだ。それぞれ、達成型と10ポイント前後の差がある。自己認識と社会認識の形成が未成熟な学生は、学生生活にうまく適応できない傾向があることを示している。
 2つ目は、「教官との交流が少ない」にイメージギャップを感じている学生が、途上型と社会型に多いことだ。両型はいずれも自我が未成熟で、他者に対する依存度が強い。「教官との交流」を期待ほどには得られていないことが表れているのではないだろうか。


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