2008年7月、大阪府立大学と首都大学東京の両学長が連携交流協定書に調印し、教育研究や人的交流など多面的な連携事業推進の方針が示された。
　両大学の交流にはこれまでに長い歴史がある。1953年に始まった夏のスポーツ競技大会は、今年で56回目を迎えた。教員同士の交流も持続的に行われてきた。そのつながりから、2007年4月、大阪府立大学の工学研究科と工学系の領域を多く有する首都大学東京の都市環境科学研究科の大学院間連携がスタートし、主に若手教員の交流が促された。今回の協定はこのような流れの中で実現した。
　交流事業の詳細は未定だが、現在、検討している取り組みの一つに「単位バンク制度」がある。両大学は地理的に離れているため、通常の単位互換制度を実現するのは難しい。そこで、学生ではなく、教員が互いに行き来して授業を行うというものだ。
　１人の教員が１単位を担当すると１人にかかる時間的・労力的な負担が大きい。そのため、複数の教員が授業を行い、学生はその中から関心の高い授業を受講して「ポイント」を蓄え、一定数に達したら単位を与えるという計画を考えている。単位バンク制度のねらいは、学生の学びの幅を広げることだ。まずは、大学院でこの制度を導入する。
　入試面での連携も課題に上がっている。オープンキャンパスで互いの大学の情報を紹介し合うほか、入試会場を提供し合うというアイデアも出ている。実現すれば、両大学とも、遠隔地からの受験生を集めやすくなる。
　また、大阪府立大学は、2007年から大阪市立大学との連携を積極的に進めてきた。最近、実施された共同事業には、図書館の相互利用、学生の海外研修の共同実施、職員の合同研修や文部科学省の「産学官連携戦略展開事業」への共同申請などがある。
　「国立に比べ、公立は規模が小さいゆえに小回りが利くという利点がある。その利点を生かし、スケールメリットが求められる場面では、3大学が柔軟に連携する関係が理想だ」と、奥野副学長は意欲的に語る。
　共通点の多い公立大学同士の連携によって教育内容を改善し、全国への発信力を強めていく構えだ。