従来、受験生にとって高校での成績が大学を選ぶ基準だった。ところが、大学全入時代が到来した昨今では、「自分がその大学でいかに成長できるか」を重視して大学を選ぶ傾向が強まっている。大学改革においても、中央教育審議会の「学士課程教育の構築に向けて（答申）」を背景に、「学習成果」を重視した取り組みが活発に行われている。
同志社大学の山田礼子教授を中心とする研究グループは、2004、2006、2007年度に全国の国・公・私立大学の学生を対象に、学生自身が感じる学習効果について調査した。調査票は、アメリカで1966年から行われている大学生調査（ＣＳＳ）を日本語に翻訳したものを使用。ＣＳＳは、アメリカの州立大学ＵＣＬＡの高等教育研究所（ＨＥＲＩ）が毎年実施し、国際的に通用する大学生調査と認められている。日本では山田研究グループが翻訳権を取得して、400ある質問項目を日本の実情に照らし合わせて翻訳し、調査を実施。国際比較ができるよう、内容をほぼ同一にしてある。
ここでは、2007年度調査において、研究グループの一人である長崎大学アドミッションセンターの木村拓也助教が行った分析を取り上げる。
木村助教は、「学士力」が一人歩きし、それを誰がどのように身に付けるのかといった、実証ベースの議論なしに大学教育の中に持ち込まれることを懸念。「成績や高校から大学への接続状況を基に分類した学生群によって、大学で身に付ける力に差異が存在するのではないか」という仮説を立て、分析を行った。「学士力」は、中教審の「学士課程教育の構築に向けて（答申）」で定義された学士課程における共通の「学習成果」に関する参考指針である。「知識・理解」「汎用的技能」「態度・志向性」「創造的な学習経験と創造的思考力」の４分野13項目が明示されている。
この分析において、木村助教は「学士力」の13項目が調査票の質問項目を因子分析した結果に振り分けられることに着目。「学士力」がどのような学生にどれだけ身に付いているのか、成績や高校から大学への接続状況などによって５つの学生群に分けて分析した。その結果、「学業が充実している」という学生群が、ほかの群より高いレベルで「学士力」に相当する資質・能力を身に付けていることが分かった。
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