特別企画

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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選ばれる大学をめざし学生のニーズを重視

 SCP制度の特徴は、学生キャンパス副学長が自由に活動できることだ。活動費は事例視察の交通費や備品の購入費などに充てられると想定しているが、原則として本人の判断に委ねられる。組織や規定は最低限必要なものだけとした。例えば、学生キャンパス副学長にサポートスタッフをあえて付けないのは、本人が必要に応じて自主的に集めるだろうという判断からだ。実際、友人に声を掛けるなどして、活動の輪が徐々に広がっている。
 廣重力理事長が学長在任中の2004年に掲げた「新医療人育成のための北の拠点」という理念には、国家試験の合格率を高めるなどの数値で測れる部分だけではなく、「優れた人間性を備える医療人を育てたい」という思いが込められている。この理念の実現に向け、最も力を注ぐ要素の一つが教育力の向上だ。この点でもSCP制度に寄せる期待は大きい。
 「高校生に高い志を持って入学してもらうために、学生キャンパス副学長の発想を取り入れて学生のニーズと一致する教育により近づけたい。SCP制度は、本学が『選ばれる大学』に成長していく上での起点になる」と、高見課長は期待を込める。1年目の今は試行的な段階だが、次年度以降、活動のさらなる進展が、大学改革にどのような成果をもたらすかが注目される。

学生インタビュー


学生と教員の仲介役に徹する

学生キャンパス副学長 薬学部3年

斉藤芳敬 さん


 大学で2年間過ごし、学食のメニューから授業内容にまで不満がありました。しかし、誰に対して何を言うべきか分からず、要望しても変わるとは思えませんでした。ですから、学生キャンパス副学長は面白い取り組みだと思いました。
 学生キャンパス副学長に就任してわずか3カ月ですが、教員に対する印象が大きく変わりました。教員は学生のことをあまり考えず、教育よりも研究に熱心という印象がありました。しかし、個人的に先生と接する中で、私が思う以上に、教員は学生のことを考え、もっと高度な教育をしたいのに学生の意欲が伴わないと、不満を抱く教員がいることも分かりました。互いに不満を感じている要因の一つに、コミュニケーション不足があると思います。私は学生キャンパス副学長として、教員と学生を仲介する役割を果たしたいと考えています。意見箱で、学生の率直な意見を広く集めたのもそのためです。寄せられた声は「学食をおいしくしてほしい」「設備を改善してほしい」など、誰の目にも付く内容が多く、授業内容や指導法に踏み込んだ意見はほんの一部でした。学生の問題意識はまだ低いのかもしれません。
 私たちが集めた学生の声は、教職員に伝えて改善に役立ててもらい、次年度の学生キャンパス副学長に引き継ぎます。一般の学生が何を考えているのかを把握することが、大学運営の改善につながると考えるからです。こうした取り組みの蓄積に、私たちがより大きな役割を果たせるようになれたらうれしいです。
 1人当たり30万円の活動費が与えられたことに大学の“本気”を感じ、成果を出さねばというプレッシャーもあります。しかし、この仕事は想像以上に楽しい。多くの人と出会い、大学で学ぶ意義を考え直すことを通して、視野が広がったと思います。まずは友人に手伝いを頼むなどして、こうした体験をほかの学生にも広げたいです。


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