特集
Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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「万人のための大学」では教養教育の重要性が増大

 かつて大学はエリートのための機関であった。そして、大学と教養教育の関係には、教養教育を終えた者を入学させ、大学を専門教育のみのものとするヨーロッパ型と、教養教育を専門教育とともに大学教育に組み込んだアメリカ型の、2つの型が存在する。
 戦前の日本の大学はヨーロッパ型で、教養教育は旧制高校で終わり、大学は専門教育の機関とされていた。そして、戦後の改革でアメリカ型への転換が図られ、大学は旧制高校をのみ込み、専門教育とともに教養教育の機関となった。
 しかし、日本における大学観はエリート型のままで、その後は改革のたびに専門教育が強化され、教養教育は縮小を余儀なくされた。そして、遂に1991年の大学設置基準の改正で、教養は教育課程の編成上、単なる配慮事項でしかなくなり、多くの大学で教養部の解体が推進された。
 ところが、世紀末を迎えるころから、教養教育が大学教育の重要な役割であると、唱えられるようになった。それは、2006年末に公布された新しい教育基本法に「大学は、学術の中心として、高い教養と専門的能力を培うとともに」と、大学の役割として教養教育が明記されたことに象徴される。
 このことは、前述のように、日本の大学が、すでに万人のためのものになったことを反映している。知識基盤社会といわれる現代においては、民主主義社会の責任ある個人として行動し、高度な職業の担い手となり、複雑化する社会において生活を享受し、内面的な自己実現を図ることのできる、統合された能力の形成が、万人に求められる。大学がその課題を担うためには、専門教育だけでは足りず、教養教育を再構築する必要性が生じているのである。


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