大学満足度調査は、卒業(予定)者を対象に行うのが一般的で、本意入学者、不本意入学者に分けて継続的に調査できる環境を整えている大学は少ない。さらに、退学者を対象に調査を行うことは困難である。しかし、実際には図のとおり、退学者にも大学満足度の高低がある。
退学と聞くと良いイメージを抱かないが、退学率を下げることよりも、退学者を含めた大学満足度を高めるほうが、大学にとっては重要な場合もある。結果的に退学した学生でも、大学の関与に良い印象を持てば、満足度は高まる。卒業・退学した後に大学に対してどのようなイメージを残しているかが、大学経営の面では非常に重要なのである。
退学率が非常に低い大学でも、卒業生の満足度が低ければ安泰とはいえない。一方、退学率は必ずしも低くなくても、卒業生や退学者の満足度が高い場合は、その大学のファンやサポーターとなり、口コミ広告や近親者への推薦につながる。
愛媛大学の場合、近年の退学率の減少と同時に、卒業予定者の大学に対する満足度が、上昇傾向にある(「満足」と「どちらかといえば満足」の合計割合は、2004年度81%から2007年度91%に増加)。退学率の減少と満足度の上昇が連動していて、対応策がうまく機能しているといえる。
しかし、退学者の満足度は把握できていない。今後もすべてを把握することは難しいかもしれない。その場合は、退学の相談に対応した教職員が、大学に対する学生の満足度に加え、教職員に対する満足度の印象を記録するだけでも、重要な資料となり得る。こうした取り組みによって、積極的退学と消極的退学の詳細データの記録が可能となる。
「大学の諸活動全般の情報を集めて客観的に分析し、組織の企画・政策策定・意思決定を支援する」というIRの観点からすると、退学率のデータだけでは効果的な経営指標となりにくい。退学の理由、大学の関与の度合い・質、大学に対する満足度の3つと照らし合わせて分析を行うことにより、改善のポイントを見いだすことが重要である。退学率の減少策と同様に、満足度を向上させるための問題点の指摘と対応策の提案が、IRを駆使したゴールとなる。
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