ザ・リッツ・カールトン・ホテル・カンパニー(以下、リッツ・カールトン)は、世界各地にホテルを持つ。日本では、1997年の大阪に続き、2007年に東京にオープンした。日本支社支社長として私が大切にしていることは、ホスピタリティ(もてなしの心)と、リッツ・カールトンが持つブランドのカテゴリーを崩さないことだ。
2008年11月に世界のリッツ・カールトンの支社長を集めて開かれた会議で私たちが確認したのは「激しく変化する経済の波にしっかりとしたアンカー(碇)を下ろさなければいけない」ということ。他社に対して優位に立つために、企業哲学とビジョンをしっかり持つべきだということを、あらためて共有した。
そこで、「積極的に何もしない勇気を持つ」という方針が全社的に共有された。何もしないということは、してはならないことをせずに、これまでのサービスをさらに深めていくという意味だ。
リッツ・カールトンでは、「ブランド」は「信頼」であると定義している。顧客からの信頼が失われないことを最優先とし、支社長会議が開かれた2008年11月からの3年間を「我慢の時代」と位置付けた。特に、価格競争への参入はタブーとした。宿泊料を安くすると、リッツ・カールトンのブランドのカテゴリーが崩壊する。それによって、顧客からの信頼が失われる可能性が高いからだ。
|