教育力向上をめざす大学ブランディング

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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理念や考え方の浸透に欠かせない「クレド」

 リッツ・カールトンのブランドに対する考え方を社内に浸透させるうえで、欠かせないのが「クレド」の存在だ。クレドはラテン語で、「信条」などと訳される。従業員が携帯している「クレドカード」には、提供するサービスについての考え方や従業員への約束など、創業者の思いが書き込まれている。
 クレドを読み、考えることによって、創業の理念や考え方が従業員の中に浸透していく。現場で生き生きとした物語が体現されてこそ、初めてクレドを理解したといえる。従業員は、クレドをはじめ、リッツ・カールトンの価値観や理念について、常に考える機会を持つ。シフト制勤務の最初の15分は、これらについて考えるための時間と決められている。
 リッツ・カールトンの従業員として、何をすべきか規定した「サービス・バリューズ」には、「私は、強い人間関係を築き、生涯のリッツ・カールトン・ゲストを獲得します」という一文がある。ポイントは「私」という主語で始まることだ。所属するセクションにおいて、「私」ができることは何か、「強い人間関係」とは何か、「弱い人間関係」とは何か。世界中の従業員が毎日話し合い、理解を深めている。
 リッツ・カールトンは、「We are Ladies and Gentlemen serving Ladies and Gentlemen」をモットーとする。「紳士淑女をおもてなしする私たちもまた、紳士淑女です」という意味だ。従業員は、顧客に対してだけではなく、業者の人々に対しても紳士淑女であるとはどういうことか考え続ける。
 そうするうちに、リッツ・カールトンの物語を自身が体現できるようになる。「私はリッツ・カールトンの一員です」から、「私はリッツ・カールトンです」になるのだ。
 ブランディングや理念というものは、頭で考えているときではなく、体現したときに初めて生きるものだと、私は考えている。


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