教育力向上をめざす大学ブランディング

ながさわ・しんや

早稲田大学理工学部卒業。早稲田大学大学院理工学研究科博士前期課程修了。工学博士。立命館大学教授・副学部長などを経て現職。フランスESSECビジネススクール客員教授。感性商品開発、デザイン&ブランドマネジメントが専門。『老舗ブランド企業の経験価値創造』(同友館)、『ルイ・ヴィトンの法則――最強のブランド戦略』(東洋経済新報社)など約60の著書がある。早稲田大学のUI開発に協力。企業・大学双方のブランディングにおいて豊富な経験を持つ。


こいで・しょうぞう

国際基督教大学教養学部卒業。(株)マッキャンエリクソン勤務などを経て、2000年に当時国内で数少なかったブランドマネジメント専門のコンサルティング会社を設立。トップ企業から新進のドットコム企業、公共団体まで、幅広い顧客のブランド開発に携わる。

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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パネルディスカッション:ブランディングは教育力向上の第一歩

パネリスト
 長沢伸也氏 早稲田大学大学院商学研究科教授
   高野登氏 ザ・リッツ・カールトン・ホテル・カンパニー日本支社支社長
   片岡晃 (株)進研アド代表取締役社長(当時)
コーディネーター
 小出正三氏 ブランドロジスティクス(有)代表取締役

高校生や学生の心に訴える仕掛けづくり

 パネルディスカッションでは、早稲田大学大学院商学研究科教授の長沢伸也氏、ブランドロジスティクス(有)代表取締役の小出正三氏、(株)進研アド代表取締役社長(当時)の片岡晃に、基調講演を行った高野登氏も加わり、ブランド構築の専門家による討議が行われた。
 長沢氏は、「経験価値」と呼ばれる考え方が、高等教育界にも求められると提唱した。経験価値とは、顧客が商品やサービスに接したときに、実際に肌で何かを感じたり、感動したりすることによって、その人の感性や感覚に訴える価値を指す。単に製品やサービスをモノとして売るのではなく、顧客の感性や感覚に働きかけることにより、消費に意味付けをするコト売りの重要性を指摘した。
 長沢氏が例として挙げたのは、京都の京菓子司「末富」だ。「ラプソディー・イン・ブルー」という商品は、ニューヨークを歩きながら同名のジャズが頭に浮かぶ感覚を和菓子に仕上げたものだという。
 「こうした背景を知って食べると、顧客は和菓子の味だけではなく、ニューヨークの情景と音楽を思い浮かべながら食べることができ、さすがに末富の味だと感動する。和菓子の味だけではなく、異国の文化まで味わうことができ、その価値に魅力を感じる」と、長沢氏は解説する。
 大学については、「人間力が備わる、高い教養が身に付くなど、学生がどう変わるか、何ができるようになるかというコトがきちんと伝われば、授業料も高いとは感じないはず」と述べ、教育体制、施設などの価値とともに、高校生や学生の心に訴える仕掛けが必要だと説いた。


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