パネルディスカッションでは、早稲田大学大学院商学研究科教授の長沢伸也氏、ブランドロジスティクス(有)代表取締役の小出正三氏、(株)進研アド代表取締役社長(当時)の片岡晃に、基調講演を行った高野登氏も加わり、ブランド構築の専門家による討議が行われた。
長沢氏は、「経験価値」と呼ばれる考え方が、高等教育界にも求められると提唱した。経験価値とは、顧客が商品やサービスに接したときに、実際に肌で何かを感じたり、感動したりすることによって、その人の感性や感覚に訴える価値を指す。単に製品やサービスをモノとして売るのではなく、顧客の感性や感覚に働きかけることにより、消費に意味付けをするコト売りの重要性を指摘した。
長沢氏が例として挙げたのは、京都の京菓子司「末富」だ。「ラプソディー・イン・ブルー」という商品は、ニューヨークを歩きながら同名のジャズが頭に浮かぶ感覚を和菓子に仕上げたものだという。
「こうした背景を知って食べると、顧客は和菓子の味だけではなく、ニューヨークの情景と音楽を思い浮かべながら食べることができ、さすがに末富の味だと感動する。和菓子の味だけではなく、異国の文化まで味わうことができ、その価値に魅力を感じる」と、長沢氏は解説する。
大学については、「人間力が備わる、高い教養が身に付くなど、学生がどう変わるか、何ができるようになるかというコトがきちんと伝われば、授業料も高いとは感じないはず」と述べ、教育体制、施設などの価値とともに、高校生や学生の心に訴える仕掛けが必要だと説いた。
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