特集
Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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高校における実践の低調さが課題

 新学習指導要領の実際の規定に目を移そう。とりわけ注目すべきは、「総則」において、「生徒が自己の在り方生き方を考え、主体的に進路を選択することができるよう、学校の教育活動全体を通じ、計画的、組織的な進路指導を行い、キャリア教育を推進すること」と述べられ、各学校に対してキャリア教育の推進を明示的に求めている点である。
 2008年3月に告示された小・中学校の新学習指導要領においても、キャリア教育の推進につながるさまざまな規定が新たに加えられているが、「キャリア教育」という文言自体は用いられていない。小・中学校と高校との差異が生じたのはなぜか。
 その鍵を握るのは2008年7月に閣議決定された「教育振興基本計画」である。同計画では、「今後5年間(2008〜2012年度)に総合的かつ計画的に取り組むべき施策」の中に、キャリア教育の推進が次のように盛り込まれている。
 「子どもたちの勤労観や社会性を養い、将来の職業や生き方についての自覚に資するよう、経済団体、PTA、NPOなどの協力を得て、関係府省の連携により、小学校段階からのキャリア教育を推進する。特に、中学校を中心とした職場体験活動や、普通科高等学校におけるキャリア教育を推進する」
 これまで、キャリア教育の推進は、各種の報告書や、中央教育審議会答申等において強く求められてきた。しかし、国として「キャリア教育を推進する」との方針を決定し、それを明示したのは、教育振興基本計画が初めてである。
 このように、高校におけるキャリア教育の推進は、政府を挙げて取り組むべき課題となっているが、その裏には、これまでの高校での実践が低調に終わっているという実態があると言わざるを得ない。
 例えば、ほとんどの中学生が職場体験の機会を得てから高校に進学するにもかかわらず、高校生のインターンシップ(就業体験)への参加率は高くない。特に普通科では、大多数がインターンシップの経験のないまま卒業してしまう。「うちは進学校だからキャリア教育は関係ない」等の誤解が、この実態を助長してきたのではなかろうか。
 ここで、新学習指導要領が、学習意欲向上や学習習慣確立との関係の中でキャリア教育の推進を求めたことを、今一度、確認しておきたい。なぜ勉強しなくてはいけないのか、今の学習が将来どのように役立つのかということなどについての発見や自覚は、学習への動機を構成する基本的要素といえよう。
 しかし、この点においても、これまでの高校教育は成功しているとはいい難い。日本の高校生は、現在の学習と自らの将来とを関係付けてとらえてはいないし、高校における授業も、実際の社会や生活と学習との関連を生徒に伝えてはいない。さらに、こうした生徒の意識と授業の中身のいずれもが、国際的に見て「最底辺」ともいうべき状態にあることは無視できない。

職場体験(中学)とインターンシップ(高校)の参加率(2007年度)

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