特集
藤田晃之

ふじた・てるゆき

筑波大学第二学群人間学類卒業。 同大学院博士課程教育学研究科単位修得満期退学。 筑波大学教育学系講師、同大学助教授、同大学大学院博士課程准教授などを経て、 2008年から現職。教育学博士。専門はキャリア開発教育論、進路指導。

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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論説 高校と大学

大学での学びを高校に伝え
学習意欲の向上に貢献


国立教育政策研究所総括研究官

藤田晃之

高校の新学習指導要領が求めるキャリア教育の推進

 2009年3月、高校の学習指導要領が改訂告示された。告示直後には、主要各紙がこれを1面で報じ、英語の授業を英語で行う方針が明示された点などには、幅広い層から関心が集まった。しかし、新しい学習指導要領が、これまでにない明確さを伴って、高校におけるキャリア教育の推進を求めていることについては、必ずしも高い関心が向けられたとはいえない。
 文部科学事務次官は、高校の学習指導要領改訂の告示当日、都道府県教育委員会等に対して通知を出した。その中で、改訂の基本的な考え方を次の3点に整理している。
(1)教育基本法改正等で明確となった教育の理念を踏まえ、「生きる力」を育成すること。
(2)知識・技能の習得と思考力・判断力・表現力等の育成のバランスを重視すること。
(3)道徳教育や体育などの充実により、豊かな心や健やかな体を育成すること。
 これらの「改訂の基本的考え方」のうち、(2)において、「勤労観・職業観を育てるためのキャリア教育などを通じ、学習意欲を向上するとともに、学習習慣の確立を図るものとした」と明示されているのである。
 キャリア教育は、これまで同様、「児童生徒一人一人のキャリア発達を支援し、それぞれにふさわしいキャリアを形成していくために必要な意欲・態度や能力を育てる」という重要な役割を担うと同時に、新しい学習指導要領に基づく教育においては、学習意欲の向上や学習習慣の確立を図るうえでも不可欠な教育活動とされている。生徒の学習意欲の低迷が指摘され、学力そのものの低下も懸念される今だからこそ、キャリア教育に、より一層の力が注がれる必要がある、というのが新しい学習指導要領の眼目である。


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