リーダーズマインド

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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 LEADER'S
 MIND
 No.005

「ささえあい」の気風で
教職員、学生が学び合う学園づくりをめざす

  LEADER 日本福祉大学学長 加藤幸雄
   INTERVIEWER (株)進研アド代表取締役社長 川目俊哉

学生の可能性を広げるには、「ささえあい」の気風と体験的な学びが欠かせないと、加藤幸雄学長は語る。
「ふくし」の総合大学の実現に向けた思い、育てたい学生像について聞いた。

体験や人とのかかわりが学生の成長を促進

加藤幸雄学長川目 日本福祉大学は「ふくし」の総合大学をめざすべく、2008年度に健康科学部、子ども発達学部、国際福祉開発学部を新設し、6学部9学科に改組しました。「ふくし」という言葉に込められた思いと、めざす大学像をお聞かせください。

加藤学長(以下加藤) 福祉というと「社会福祉」を思い浮かべる人が多いと思います。しかし、福祉の英訳の“welfare”や“well-being”には「快適な生活、状態」という意味もあります。近年、経済、教育、心理学や工学など、さまざまな分野で福祉とのかかわりが重視されています。社会福祉という狭い概念ではなく、「社会全体の幸せを追求する」という意味を込めて、ひらがなで「ふくし」と表現しています。
 その理想を実現するため、本学では「いのち」「くらし」「いきがい」の3領域から「ふくし」にアプローチします。
 「いのち」は、人が健やかに生きるための健康・医療を追究する分野です。保健・医療福祉や精神保健福祉など、従来の社会福祉の分野に加えて、近年は医療分野との連携が欠かせません。特に、障害を補う情報機器や福祉用具の開発をめざす福祉工学は、さらに教育・研究を深めていかなくてはいけない分野です。
 「くらし」は、人々の生活を支える経済や社会福祉の制度設計について考える分野です。年金や老後の資産運用、ワーキングプアの根絶など、経済面、政策面から考えるべき課題は数多くあります。発展途上国の自立など、国際福祉開発の視点も重要です。
 豊かに生きていくためには、「いきがい」が必要です。人がどのような生きがいを持って生きるのか、保育や初等教育、心理臨床などの分野からアプローチします。例えば、里山の再生を通して、自然に囲まれた豊かな生活を地域に提供することも、「いきがい」づくりに役立ちます。半田キャンパスでは、ビオトープの技術を用いて人工の池や林を作るという実験的な試みもしています。
 これら3つの領域を連関させた「ふくし」の追究が本学のめざす教育であり、2008年度の改組はその布石の一つと位置付けています。

川目 各領域の学びを通して、学生にどのような力を身に付けてほしいとお考えですか。

加藤 私は、「見すえる力」「共感する力」「関わる力」「伝える力」の4つが重要だと考えています。これらの力は、幅広い体験や人とのかかわりなくして身に付けることはできません。
 そこで、海外での研修、留学や地域での調査など、フィールドワークや他者とのコミュニケーションの機会を数多く設けています。こうした体験的な学びの積み重ねが、協働の大切さに気づいたり、学びの対象を広げたりするきっかけになるはずです。同時に、自分自身を見つめ直し、興味の対象を広げる力にもつながります。それこそが、本学のめざす「学士力」の中心になる力です。
写真  学士力は、「自己を相対化する力」だと考えています。その到達度を設定するのは学生自身です。できることなら、本学の学生には、すべての学部での学びを少しずつ体験し、社会で応用できる幅広い基礎的な力を養ってもらいたいと思います。それは、「ふくし」とも深くかかわる力です。


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