IR 数値はこう読み解く

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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出口データの先にある卒業生調査と企業等調査

出口データのとらえ方

 出口データとしては、マクロ、メゾ、ミクロの3段階の調査を経れば、ある程度、十分であると考えられる。当然、学部ごとの専門分野に応じた業種への就職状況等も、それぞれの段階の調査に織り込む必要がある。さらに、これら以外にも、就職支援をはじめとするキャリア支援のための教育活動やサポート体制を改善するうえで、重要な調査・分析がある。それは、卒業生と企業等に対する調査・分析である。
 学生に対する調査・分析は本来、入学直後、在学中の各学年、卒業時点、就職後など、定期的に行うことが理想である。その中でも卒業後に関するデータは、大学の提供するすべての「サービス」が学生の人生でどのように生かされているのか、役立っているのかを把握するためには非常に重要であり、大学教育の効果測定として有効であると考えられる。
 例えば、「就職決定時点では本意就職であったが、その後、能力が見合わず挫折した」ケースや、「就職決定時点では不本意就職であったが、大学時代に身に付けた能力を職場で発揮し、現在は本意就労である」ケースも考えられる。卒業時点での就職率が高くても、仕事や人生の充実度が卒業後の学びや努力だけによるものなら、大学側は単純に喜ぶわけにはいかない。
 この調査で明らかにしたいことは、学生時代に受けた教育やサポート等が、卒業後の仕事や生活にどのような影響を与えているかである。大学は、それを教育プログラムや学生支援プログラムの改善に生かすことができる。
 企業等に関する調査は、卒業生を受け入れてもらった企業等に対し、大学がうたっているディプロマ・ポリシー等が職場で十分に発揮されているかどうかを調べるものである。この調査・分析は今後、卒業生の活躍の度合いを知り、社会のニーズに応えるためには、不可欠なものとなるであろう。
 卒業生や企業等に対する調査・分析については、認証評価でも有効な指標とされる一方、膨大なコストと労力を必要とするケースが多く、本格的な導入には多くの大学が躊躇するのではなかろうか。そのような意味からも、まずは卒業時点までに完了でき、新たなコストと労力をほとんど必要としない、前述の3段階の調査・分析を充実させることから始めるべきであろう。

就職率の読み解き方

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