就職率が進路決定の実態を的確に示すデータとはいえないのであれば、算出や利用はあまり効果がないように感じるかもしれない。しかし、就職率データがこれだけ長期間にわたり受け入れられてきたことには、それなりの理由がある。その点については、愛媛大学のキャリア支援担当教員とも意見交換を行った。採用に関する日本型社会システム（新卒学生一括定期採用方式）の下、景気変動や時代の流れにかかわらず、大学４年生の春先から本格化する採用内定は、卒業予定者にとってメリットが非常に大きい。
　なぜなら、この期間に大量の採用枠が設けられ、なおかつ、競争相手が同じ大学４年生に限定されるからである。これは、世界でもまれな超大型採用機会といえる。また、この採用システムは、学生の多くを労働社会に受け入れる際に「間断のない移行過程」を提供していることにもなる。
　そのような意味からも、大学側にとって、この超大型採用機会に就職希望者をどれだけ就職させているかを示す数値は、現段階では大きな利用価値があるといえる。特に、この時期の就職戦線は、学生間のみの競争であるケースが多いため、大学間の数値比較には最適であると考えられる。
　このように、「就職率の向上」や「就職率○％」といったデータは重要である。そして今後は、そこからさらに踏み込んだ本意進路率等のデータ分析が必要とされる。