社会的なスキルを向上させるプロジェクト学習を導入した授業。

　デンマークの人口は約550万人。大学は８校あり、すべて国立だ。所得格差が生まれにくい社会制度下において、高等教育は高度で専門的な職業に就くために必要とされている。
　ロスキレ大学の設立は1972年で、デンマークでは比較的新しい大学だ。社会的・職業的課題に対応できる人材の育成が期待されている。この期待に応えるべく、講義形式中心ではなく、グループワークやプロジェクト学習中心の教育を行うための改革が進められた。
　プロジェクト学習では、４〜８人の学生がグループを組み、学生自らがテーマを設定し、教員の指導の下に論文を作成する。この学習を通じて、リーダーシップ力、コミュニケーションスキル、批判力、傾聴力などが飛躍的に伸びるという。学習成果を重視する国際的な潮流に沿って、社会的スキルを向上させる教育を戦略的に展開してきた。
　この改革の鍵は、学内における対話の実践にある。デンマークの大学法により、大学の理事長は学外者でなければならず、理事長が学長を任命、学長が部局長等を任命する。こうして誕生する組織は極めて強いトップダウン型組織だといえる。
　しかし、ロスキレ大学では、役職者の責務として、教職員をはじめとする構成員との対話に時間をかけることを求めている。学長と構成員との対話を重視しながら合意形成を図り、大学運営のための戦略プランを作成する。構成員の中には学生も含まれる点に着目したい。