異なる科目を複数教員で担当する場合はどうだろうか。最も望ましいのは、コーディネートを行う専門のセンター等を設置することだろう。専任スタッフを多数、配置しないまでも、責任組織があることが望ましい。
　アメリカの場合は、早くても２年次前半、遅ければ３年次まで専攻（メジャー）を決めない学生たちの学習支援や、初年次教育、サービスラーニングなど、教室外の教育活動を支援する「University College」なる組織を置く大学が増えている。ある意味では教養部の機能に近いが、専門性の高い職員が中核を担っているところが興味深い。多様な学生に多彩なプログラムを提供しながら支援し、学習の方向性を決めるには、責任組織を設けるのが有効であるとみられているからであろう。
　しかし、こうした独立した組織がつくれない場合は、科目群のタテのつながりと、ヨコのつながりをコーディネートして補完する必要がある。
　タテのつながりとは、学士課程教育全体の中で初年次教育がどのような位置付けにあり、初年次教育の科目が、それ以降のどの科目とどのようにつながっていくのかという認識を、ＦＤ等で明確化することである。ヨコのつながりも含め、“教育課程のマッピング”をするということである。
　ヨコのつながりとは、学生の視点で、同時に履修する科目同士のつながり（素材やテーマ）や、課題を出す時期・頻度等について、同一科目担当者間の情報交換を行うことである。コミュニケーション・ボードを作るほか、ネット上でも実施可能である。
　アメリカでは、「Learning Community」といって、学生が学習集団をつくり、共通するテーマに沿って複数の科目を履修し、教室外でも共同学習する。そのことを教員らが考慮して進行する手法の教育効果が評価されている。学生のみならず、教員同士も協働して進めることが学習効果の向上につながるという話である。そういう意味では、前述の５つの提案を取り入れることも有効であろう。
　目標、プロセス（内容と方法）、評価についての情報共有、そのための協働体制づくりの重要性は、初年次教育のみならず、学士課程教育全体にもつながる。