特別企画

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
  PAGE 16/16 前ページ 

大学教員への調査を基にカリキュラムを策定

 当初、高校が懸念していたのは、SSHの指定終了後、取り組みを継続できるかということであった。一連の成果をふまえ、岡山県教育委員会は、制度・予算の両面から高大連携を支える枠組みを整備。経過措置後の2007年度以降も、それまでとほぼ同じ形で取り組みを継続してきた。
 2009年度、再びSSHに指定されたが、前回との違いは、理数科だけでなく全学科が指定の対象となっている点だ。
 プログラムを策定するにあたり、大学教員に対して、「高校時代にどのような力を育てるべきか」というアンケート調査を行った。
 質問項目は、「データの見方・考え方」「論理的思考力の育成」「発表技術」「統計データの収集方法」など十数項目。その結果を反映して、2009年度のカリキュラムでは、1年次の必修科目として「科学技術コミュニケーション」「科学技術リテラシー」を新たに設けた。課題研究の進度や深さは、事前指導に大きく影響を受ける。それらの授業でインタビューの仕方、プレゼンテーションの方法やパソコンスキルの習得など、課題研究を進めるうえで必要な基礎的なリテラシーを養い、2年次の課題研究Iにつなげる。
 大学院生に対してもアンケート調査を行い、高校の学習内容と大学院における研究との関係を調べた。
 調査を担当したSSH担当の森泰三教諭は、「理系の大学院生が、高校時代の音楽や書道も現在の研究に役立っていると回答した。一見、大学の研究とは無関係な教科・科目も、考え方やリテラシーの面で必要。大学での学術研究を意識させることによって、生徒の進学に対するモチベーションを高めることができるだろう」と話す。今後は、SSHの効果を検証するための調査・分析も行う予定だ。
 2009年度、岡山大学の大学院生が、TA(ティーチング・アシスタント)として、高校で課題研究Iの指導に当たっている。ボランティアではなく、大学の単位として認定される。生徒にとっては、大学教員より身近な存在である大学院生から、大学の授業や研究の魅力について聞く、よい機会になるという。
 今後の課題は、岡山大学の文系学部との連携も深めることだ。高校と大学が共に連携の意義を見いだし、教員、学生・生徒の活発な交流が行われている状況下、その実現も遠くはないだろう。


  PAGE 16/16 前ページ 
目次へもどる
大学・短大向けトップへ