特別企画

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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課題研究で進学後の目的意識が明確化

 SSHの柱といえるのが、2年次必修科目の課題研究Iだ。生徒を約20グループに分け、グループごとに研究テーマを設定。実験・調査・検証を行い、成果を研究論文にまとめて発表する。その過程で、岡山大学や岡山理科大学に赴き、大学教員からアドバイスを受けるグループもある。
 大学教員の助言が必要なグループは、生徒自らが研究テーマと専門分野の近い教員を調べて、支援を依頼する。内容は、テーマ設定、調査の進め方や実証データの取り方、レポートのまとめ方などさまざまだ。「その結論の背景には、どういう要因があるのか」「それを証明するには、ほかにいくつかの実験が必要なはずだ」など、専門的な視点からのアドバイスを得ることによって、生徒は研究の手法や論文のまとめ方を体得していく。
 生徒を引率する教員にとっても、よい機会になるという。理数科長の三島誠人教諭は、「研究や実験など教科にかかわる内容はもちろん、研究室の雰囲気もわかり、大学教員との雑談から、大学生活、就職の実態など、大学のパンフレットからは見えない情報を得ることができる」と話す。
 教員を驚かせるのは、研究に対する生徒の前向きな姿勢だ。研究者である大学教員との接触は効果が大きい。生き生きとした態度で研究に取り組む姿は、座学中心の高校の授業ではあまり見られないという。
 高大連携で培った力は、大学進学後の学びにも役立っている。進路指導主事の大橋武文教諭は、「課題研究や出前講義などを通して、ノートを取る力やレポートを書く力がつくため、大学の学びにも違和感なく入ることができる」と説明する。

「課題研究を通して学んだこと」(アンケート結果)
図:「課題研究を通して学んだこと」(アンケート結果)
2006年度の2年生に対して「課題研究を通して学んだこと」を尋ねた結果。約8割の生徒が「研究の楽しさ」「研究の難しさ」を挙げた。「協力の大切さ」を実感する生徒が、事後に大幅に増えている。

 生徒の志望校の選び方は変わりつつある。課題研究などを通して、「大学研究」に対する意欲が高まり、教育内容や研究内容によって志望校を選ぶ生徒が増えているという。自ら大学教員の研究内容を調べる生徒や、大学の研究室を訪問し、教員と入学後の研究について相談する生徒がいる。推薦入試・AO入試で合格する生徒の増加も、目的意識が明確になっていることを示している。
 岡山大学のマッチングプログラム(MP)コース(AO入試)には、開始した2006年度入試からの4年間に10名が合格。「岡山一宮高校出身者には、パソコン操作や発表技術に優れた能力を持つ学生が多い。本年度、MPコースのパンフレット制作の中心になったのが岡山一宮高校出身者で、非常に好評」と、MPコースを担当する小島正明教授は語る。


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