学生の成長を追う!

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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高校時代の社会化による学生類型ごとの違い

 高校時代の経験の評価として社会化の度合いを尺度に用いて、以下の4類型を設定した。
(1)高順応・低逸脱型──規範に忠実で現状に満足している層。
(2)高順応・高逸脱型──あらゆることに興味・関心を持って積極的に活動する層。
(3)低順応・高逸脱型──学校・社会に対する不満を具体的に表出する傾向のある層。
(4)低順応・低逸脱型──あらゆる社会的な活動に積極的ではない層。
 それぞれの類型の学生は、大学生活をどのように評価しているのであろうか。

図表2:高校社会化4類型×大学満足度3類型

 図表2に見られるとおり、大学生活をめぐる「授業」「生活」「設備」のいずれについても、高順応・低逸脱型は満足度が最も高い。高順応・高逸脱型と低順応・低逸脱型がこれに続き、低順応・高逸脱型の満足度が最も低くなっている。特に、高順応・低逸脱型は、大学生活をめぐる項目で高い満足度を示している。
 一方、結果を見る限り、低順応・高逸脱型は、大学教育に対して背を向けている学生が多く含まれているように見える。個々の不満を受け止め、改善を図っていくことは重要である。しかし、社会化が十分に進んでいない可能性のある群の学生に対しては、授業など既存の指導の充実以前に、社会化を進める取り組み、あるいは入学した大学に対する肯定的な意識を涵養する取り組みを図る必要もあるだろう。
 同様に、低順応・低逸脱型の学生は、学力面での自己評価は低くないにもかかわらず、何事に対しても積極的ではないという傾向が顕著に示されている。彼らの日常の授業・大学生活が、大学・教員側から見えにくくなっている可能性がある。
 低順応型の2群の学生はいずれも、特にリーダーシップや協調性といった対人関係能力に関して自己評価が低く、さらに、PCの活用能力やプレゼンテーション能力など、初年次教育で育成が図られるべきアカデミック・スキルに対する自己評価も低い。
 こうした現実への対応策は、短期的なものと中期的なものが想定される。短期的には、初年次教育などの教育プログラムの再検証を通じて、基礎的なスキル習得、およびグループ活動の反復などによる人間関係構築の支援を徹底するといった教育内容の改善が必要である。
 そのうえで、中期的には、自学の新入生の傾向に現状の教育プログラムが適合しているのか検証する必要がある。特に低順応型の学生の動向を把握したうえで、適切な対応策を検討・実施していくことが、学生全体の成長の底上げ、満足度向上に結びつくのではないだろうか。


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