IR 数値はこう読み解く

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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回答しない学生の傾向も把握

 授業評価アンケートに関するデータは、教員個々、質問項目ごと、同一科目、目的別などで経年変化を追いながら、改善の度合いを分析することが重要である。
 特に、語学や数学のように複数の教員で同一の授業を行う科目については、教員間(授業間)の比較も必要となる。その場合、それぞれのアンケートには異なる学生が回答している点をふまえたうえで、数値的分析に加え、自由記述欄の分析を行う。それを教員批判ではなく前向きな改善策提案につなげることが、IRer(Institutional Researcher)の役割となろう。
 目的別分析は、授業改善の負担を個々の教員だけに任せるのではなく、組織の課題としてとらえることにもつながる。アンケートデータを教員個人のものではなく、大学や学部・学科のデータとして取り扱い、組織的な授業改善や単位の実質化の指標として活用すれば、組織的IRデータとして、さらに有効になるであろう。
 そのためにも、授業評価アンケートの結果にとどまらず、その目的と改善の実態を公表し、学生のさらなる協力を仰ぐ必要がある。
 授業評価アンケートの回答を学生に義務化していない大学においては、分析を行ううえで気をつけるべき点がある。それは、アンケートに回答しない学生層の傾向の把握である。一般的に、授業や教員に対して、特に否定的な学生は回答率が高い。その反対に、肯定的な学生は回答率が高いとはいえないようである。
 アンケートの回答を必須にしていない大学のIRerは、無回答学生の傾向をふまえたうえで、分析を行う必要があろう。
 実施ありきの授業評価アンケートが、効果的な分析を困難にしていることは否定できない。目的を明確にし、それに応じた質問設定・分析を行うことが、IRデータとして活用する前提条件といえる。

授業評価結果の読み解き方
1

目的別に集計し、学生の姿勢や教育環境の課題も発見する。

2

回答しない学生層の傾向を把握したうえで、分析する。


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