特集
髙田正規

ベネッセ教育研究開発センター特別顧問

髙田正規


Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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まとめ

「何を教えるのか」から「何をできるようにするのか」

─教育観パラダイム変化を読みとる

ベネッセ教育研究開発センター特別顧問 髙田正規   

若者のメンタリティ

 若者のモチベーション・クライシスは、高校と大学に共通した問題である。
 不透明な未来より「今」、不確実な社会より「私」を重視し、何の保障もない未来に向けて努力することは虚しいとする心象風景の中に青少年が置かれていることの反映である。
 文部科学省は新しい学力観を提唱し、「強い人間モデル」を描いてみせたが、これを一般化することの難しさを教育現場は訴えている。

環境が「やる気」に影響

 「生徒に対する学習の動機付けに苦労している」と答えた高校教員は、62%に達した。これを否定する教員は16%で、すべての設問の中で最低値となった。しかも、学校類型間格差は極めて大きく、肯定率は、進学重点校が33%であるのに対し、進路多様校では80%に達していることが注目される。多様なインセンティブを準備しても、進学重点校ではそれが機能し、進路多様校では機能していない。
 高校生調査の結果では、進学重点校と進路多様校の生徒の「やる気」に対する肯定度の違いから、隠されたカリキュラム(学校文化)の有無が生徒の「やる気」に影響していることもわかった。
 「やる気」は個人の属性というより、その人の置かれている状況(特に人間関係)によって、「ふくらんだり、しぼんだりする」ことを学校類型間格差の存在が教えてくれる。


図表4:高校教員が生徒に起因する課題で指導上、困っていること

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