特集
Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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大学が特色化する一方で変わらぬ社会の評価基準

 今春の大学入試で、多くの高校関係者の間で話題になったある変化があった。一般入試において、一部の大学の間で、学内併願によって1人の受験生が集中して同一大学に出願する傾向が見られたのである。この背景には入試の複線化がある。特定の大学に受験生が集中すれば、その他の大学では一般入試が機能しなくなる可能性がある。
 このことは大学マーケットに大きな変化をもたらすと、高校現場では予想している。ほとんどの大学は、一般入試まで待っていたのでは志願者確保が厳しい状況をふまえ、他の入試方式へと大きく転換すると考えている。つまり、推薦・AO入試は、さらに拡大するであろう。
 これまで、大学には一般入試で入学するのが当たり前という前提に立った情報ばかりがあふれていた。そのために、推薦入試やAO入試は、一般入試で入るのが難しい大学への抜け道と考えられていた面がある。
 今後は、入試難易度を基本とした情報は、多くの大学にとって志願者を集めるためにはむしろ不利であると考えられる。これからの大学広報のトレンドは、相互理解に基づくマッチングがキーワードになると予想している。大学は他大学との差別化を進める一方で、その特色に合った学生を確保するための広報活動に力点を置かざるを得ない。そうしなければ、志願者を確保できない状況が生じてしまうであろう。
 大学は、設置基準の大綱化、学校教育法の改正等を経て特色化が進んだにもかかわらず、社会では依然として入試難易度に基づき大学を序列化する風潮が根強い。多くの大学はその弊害を、痛いほど感じているはずである。
 多くの高校では、持ち回りで進路指導を行う中で外部から入手する情報に頼らざるを得ない現状がある。そのため、入試難易度というわかりやすい情報に基づく一般入試中心の指導に力点を置く面があった。
 しかし、一般入試が従前のように機能しない状況の下、入試難易度に基づく大学選びを見直す高校が、都市部を中心に増え始めた。推薦・AO入試で進学する生徒の数を伸ばす高校も増えている。そのことが、他の高校の進路指導にも変化をもたらしている。
 AO入試は、「青田買い」と揶揄されてきた面がある。しかし、生徒が自らの将来に向けた展望を持ち、真に自分に合った大学を選ぶようになれば、進学が決まったからといって学習を放棄することもなく、一層前向きに取り組むようになる。


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