学士課程教育体系化のステップ

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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第3ステップ:APの策定

高校の教育課程の延長にある大学のAP

 3つのポリシーの中で最も早くから日本の大学に普及したのがAP(DPを達成するために、入学時に求められる最低限の能力)である。AP策定は三角形の中ほどに引かれたDPの基準からさらに引き下げられた場所に底辺を定める作業である。この策定順序に沿ってAPを見直すと多くの課題が見えてくる。
 愛媛大学教育企画室が、既に作成・公表されている各学部のAPを確認したところ、①DPの内容が混在している、②DPを超えた内容となっている、③受験生には理解が困難な表現がある、④入試制度と対応していない、⑤「関心・意欲」「態度」の領域に偏りすぎている、という課題が明らかになった。よって、DPをふまえ、上記の点に留意してAPを見直すように各学部に依頼した。
 例えば、教育学部では、修正前は「関心・意欲」の観点に偏っていたが、修正後は5つの領域の能力をバランスよく求めるものとなった(図表4)。修正前には欠けていたセンター試験や実技試験で問うている知識・理解力・実技能力が挿入された。また修正前はDPを超えた内容、多くの受験生には理解が困難な文言があったが、現実的で平易な文言となった。

図表4:APの修正例/愛媛大学教育学部

 APとどの入試制度が対応しているかをチェックするため、アドミッション・ポリシー・チェックリストを開発し、必要に応じて使用してもらった(図表5)。

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図表5:アドミッション・ポリシー・チェックリストの例/愛媛大学農学部

  こうして修正されたAPは現実的で、大学や学部の個性・特色はあまり表現されていない。それに対して批判的な考えもあるだろう。しかし、これまでのAPは、高校と大学の教育課程をどう接続するかについてあまり配慮せずに設定されていたのではないだろうか。高校教育との接続という点で考えれば、APは一般的な高校教育を想定して策定されるべきで、それにより受験生の身の丈に合ったものになるはずである。大学・学部の個性・特色は、APではなく、DPとCPにおいて表現すべきである。APの修正は、教育課程上の高大接続を円滑にするという重要な教育改革でもある。


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