特集
Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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学び続ける力を育てその受け皿も整備

 もはや、4年間に閉じた発想で設計される大学教育では社会の要請に応えられず、小学校段階から卒業後まで目配りした中長期的視点で、4年間の教育プログラムを組み立てる必要がある。さらに、個人の努力や能力では乗り越えがたいほどに雇用環境が激しく変動する現代においては、社会への出口でつまずいた者や社会に送り出した卒業生をも、生涯にわたって支援することが、大学の新たな役割として期待されている。
  一人ひとりの社会的自立を支えるうえで、「学び続ける力」の育成の重要性が指摘される。労働政策研究・研修機構は、総務省が2007年に実施した「就業構造基本調査」の結果を基に、調査時点までの3か月間に非正規雇用から正規雇用に移行した者と、非正規雇用のままの者(いずれも15〜44歳)を比較。前者の方が、公共職業能力開発施設の講座の受講など、自己啓発に取り組んだ割合が高く、学歴が高くなるにつれ取り組む割合が高いことも確認された。自己啓発の実施と正規雇用の時期の前後関係は明らかでないが、非正規雇用から正規雇用への移行において「学び続ける力」がプラスに作用することがうかがえる。
  同機構の小杉礼子統括研究員は、「大学は、学習習慣の獲得において一定の役割を果たしているといえる。学問の社会的レリバンスに対する要請が高まる中、生涯にわたるキャリアを切り開くための教育という役割を、大学はより強く認識すべきだ」と話す。継続的な学びの受け皿になる生涯学習プログラムの整備は、いうまでもなく重要だ。
  就職状況がかつてないほど厳しさを増す中、大学は従来の人材育成のプロセスを根本から見直す必要がある。大学単独ではなく、社会、産業界との連携によってそのニーズを取り込み、初等中等教育との連携による連続性ある教育プログラムを通して確かな力を学生に身に付けさせ、社会への移行を支援すべきだ。


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