特集
Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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中長期的視点からのアウトカムの設定

 教育と職業キャリアの関係を研究している九州大学の吉本圭一教授は、「大学教育の多くの分野は、社会ですぐ役立つようなラーニングアウトカムを設定することが難しい」と指摘する。吉本教授が参加するプロジェクトが2001年の大学卒業者を対象に実施した調査では、就職直後と5年後の2回、仕事における自分の知識・技能の活用度を5段階で聞いた。「使っている(ランク5+ランク4)」は、就職直後の35.6%から5年後には56.4%に増加した。
  吉本教授は、「5年ほどの見習い期間を経てようやく大学で学んだことを生かせる、5年間の仕事を通して知識や技能が身に付くなど、いくつかの解釈が可能」と説明。いずれにしても、卒業から一定期間を経た中長期的なキャリアに焦点を当てたアウトカム設定が重要であり、そのためには卒業生や企業との対話が不可欠だと指摘する。
  中長期的な視点でキャリア支援を考える場合、高校までの教育との連携によって基礎的な力を確実につけさせることが必要となる。小・中・高校の各段階で、進路決定にかかわる基礎的な知識や態度がどのような方法でどのレベルまで形成されるか把握する必要があり、大学はここでも対話を求められる。
  そこからさらに踏み込んで、大学ならではの専門的知見を生かして小・中・高校のキャリア教育に積極的に関与、協力することも期待される。学校種間で分断されがちなプログラムを俯瞰的な立場でコーディネートし、つなげることによって、学校種間の移行、社会への移行がより円滑になされるはずだ。


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