大学連携が生む地域の活力

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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企業と学生の交流の場「C−Campus」が誕生

 2009年4月に大阪の中心部、難波に6大学連携事業の拠点としてキャリア教育センター「C−Campus」が誕生した。ここは、参加大学の学生にとってキャリア形成の活動拠点として位置付けられる。学生が「働くことの意味」や「生き方」を考えるために、気軽に立ち寄って交流できるカフェのような場としてつくられた。就職に関する情報の収集、各種セミナーの受講などが可能だ。訪れた企業関係者と思いがけず話が弾むこともある。
  一方、大学にとって就職支援・指導は、大学の戦略と直結した課題であり、本来は共同するのが難しい。しかし、「人間基礎力の差は就職活動の結果に大きく影響するが、その育成には手間と時間がかかり、取り組むのは難しい」という認識は、各大学共通にあったという。この共通認識の下、直接的な就職支援ではなく、キャリア形成支援の大学共同モデル事業を実践する場として、C−Campusが誕生した。教職員の交流も期待されている。
  ここで実施されている「リンカーンプロジェクト」は、学生が学生に対して中小企業をPRする試みだ。南大阪地域には中小企業が多いが、知名度が低いため入社を希望する学生が集まりにくいという問題がある。そこで、学生が企業を訪問して魅力を探り、企業に代わって求人誌の作製や合同企業説明会の開催をする。学生の企業を見る目を養い、プロジェクト運営を通して人間基礎力を育てるのがねらいだ。2009年度は54人の学生がかかわり、39企業が協力した。
  2009年度、C−Campus訪問者は1818人で、このうち企業からの訪問者は396人だった。「多くの企業が人材育成に関して悩みを抱え、学生の実態やキャリア教育の内容を知りたがっていることを実感した」と、難波氏は話す。学生の人材育成に協力する意思のある企業には「企業バンク100」に登録してもらっている。めざすのは、大学と企業、自治体、地域が一体となった人材育成のしくみづくりだ。
  戦略的大学連携支援事業の取り組み期間終了後は、成果を基にコンソーシアムとしての事業を推進する考えだ。その先に見据えるのは、地域全体で学生や社会人に多様な学びを提供する「南大阪キャンパス構想」だ。地域社会に「キャンパス」を整備し、「学びのユビキタス」をめざす。その実現に向けて、各大学が教育の個性化・特色化を進め、学生がその効果を享受できる環境の整備を進める考えだ。難波氏は、「各大学の特色を生かし、効果的な資源でより多くの実りを得られる連携の形を模索したい」と、意気込みを語った。


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