特集 「完全新課程生」をどう育てるか
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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頑張り体験の不足が学習姿勢を変えている

―先生方のお話をお聞きすると、授業にしろ生活指導にしろ「何かしてもらうことが当たり前」という傾向が、03年から05年にかけても更に強くなってきたようですね。その原因はどこにあるとお考えですか。

浅川 言いにくい所なのですが「学習支援」という言葉がありましたよね。ちょうど05年度入学生が小学校に入学した頃です。内発的な学習観によるのでしょうが、当の生徒にやる気がなくても、先生が手をかけて、何とか学習に向かわせてしまう。結果的には助けてしまうといった傾向も指摘されていました。それらは全体的に「自分ですべてやり遂げた」という体験を不足させることにもつながってしまったのではないでしょうか。沢井先生がおっしゃった「他力本願」の要因の一つには、このような背景もあったのかも知れません。

沢井 私が感じるのは、社会全体として、「子どもが失敗するのを未然に防止する」という感覚が強くなりすぎていることです。子どもが何かやろうとするとき、本人が考える前に、必ず「こうしたら失敗しない」というマニュアルを周りの大人が用意してしまいますよね。入試に向けて塾を利用するのは、まさにその感覚の延長だと思うんです。

後藤 ただ、塾依存ということに関しては、我々学校の教師の側にも問題があると思います。「学校中心の学習が大切」と言いつつ、その言葉の裏付けとなる体制をきちんとつくれていない面はあるわけですから。ただ、最低限「これだけはやらないでくれ」ということは、学校側から塾に伝えた方がよいと思います。実際、本校は近隣のいくつかの塾とそういう話を始めていて、例えば「社会科は倫理や現代社会を自分でやれば大丈夫」などというアドバイスは絶対しないようにお願いしています。否定するだけではなく、ある種の共存は必要なのではないかと思います。

浅川 時代や環境のせいにしないで、教師が創意工夫をして何とかしてみる発想は大切ですよね。塾に関しても、もちろん、べったり依存してしまうのは困るわけですが、塾の使い方が上手い生徒は、あくまでも学校中心の学習法は守りつつ、冬期講習や夏期講習だけをポイント的に使いこなしたりしています。「塾が悪い」と一律に決め付けるのではなく、どういう活用法が効果的なのかを、きちんと分析していかなければなりません。


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