特集 「完全新課程生」をどう育てるか

VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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「手をかけるだけ」の指導を見直す必要性

―気質変化の原因はさまざま出てきそうですが、高校入学段階で望ましい生活・学習態度に転換させる必要性は今後とも変わりません。以前に比べて状況は厳しいわけですが、どのような方策が有効だと思われますか。

沢井 まず言えるのは、「自分で選んだ」という体験を積ませないと、意欲の向上にはつながらないということです。本校では学力の多層化に対応するため、05年度から数学で習熟度別授業を導入したのですが、ただ成績順で講座を分けただけでは、モチベーションは上がりません。そこで、必ず生徒一人ひとりの希望を聞き、必要な生徒とは面談を行った上で所属講座を決めました。「自分で選んだ」という体験を積ませたわけです。実際、このアプローチは、特に数学に苦手意識を持つ生徒には大きな効果がありました。小さな選択と成功体験を積み上げることが、生徒の意欲を向上させる一つの突破口になるのではないかと思います。

後藤 私が考えているのは、小さな失敗から這い上がる体験を、できるだけ早期に積ませることですね。先ほどから話に出ているように、「手をかけられること」に慣れている今時の生徒は、何かの拍子につまずいたときに非常に弱いんです。今まで成績の良かった子が、模試で一度失敗した途端、這い上がれなくなったりしますよね。だからこそ、入学式直後あたりに、やや難しめのテストなどに挑戦させて、わざと軽いショックを与えるアプローチが必要だと思うんです。もちろん、ショックを与えた後のフォローは必要ですが。本校ではスタディーサポートと面接週間を組み合わせて、そうしたアプローチを取っています。

―ショックに慣れさせるというわけですね。

後藤 授業の進め方などにも同じことが言えると思うのです。ここ数年の高校現場は、どちらかというと、丁寧に下位層をフォローする側に傾いていたと思うのです。しかし、方法論としては、上位層をどんどん引っ張っていって、それを励みに下位層にも頑張ってもらうというアプローチもありますよね。今のままでは、教師が手をかけ続けるばかりになってしまいますから、どこかで見直さなければならない部分が出てくるでしょうね。

浅川 生徒も変わってきましたけど、教師も変わったように思います。他校に負けないようにと、ここ数年随分と生徒に手をかけていますよね、お互い(笑)。適切な表現ではないかもしれませんが、「母性的」な指導に向かってきたように思います。授業の進め方でも「そこは放っておいていいんじゃない?」なんて言うと、「いいえ、心配ですから」とか、「まだ難しすぎます」なんて先生も多い(笑)。超自我にぶつかるような「父性原理」的な指導やメタ認知を体験させることも必要じゃないかと思います。

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