特集 生徒を大人にする「生徒指導」
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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生徒以上に厳しさを求められる教師

 厳格な生徒指導が信条の同校だが、一方的に生徒に厳しくしているわけではない。教師自身が厳しく身を律すると同時に、常に目線合わせをして、学校全体で指導にあたるよう心がけている
 その好例は合宿研修だ。生徒が分刻みで動く中、教師が一つでも指示を間違えれば、その後のスケジュールも崩れてしまう。「合宿研修で一番プレッシャーを感じているのは生徒ではなく、むしろ教師の方。担任の指示ミスで生徒が怒られることなどがあれば、教師は生徒からの信頼を失います。合宿研修の4日間は、生徒がどれだけ担任を信頼するようになるかが試される、真剣勝負の場なのです」と、中野先生は話す。
 特に、初めて担任を受け持つ教師や新任教師のプレッシャーは大きい。合宿前には、段取りや指導法が詳細に説明されているマニュアルを頭に叩き込んでおく
 「初めて担任となった教師にマニュアルを見せたら、『こんな緻密で厳しいスケジュールでは動けない』と言われたことがあります。ですから、事前に合宿施設に連れていくんです。自分たちがいる場所と生徒が寝ている部屋の距離感をつかみ、どのくらいで生徒たちを見回れるのか、実際に走ってシミュレーションするんです。教師は走り回らないと、時間的な余裕などつくれないくらいに厳しいスケジュールを自らに課していることが、新任教師にも徐々に伝わります」(中野先生)
 小迫先生は、「教師全員に厳格な指導姿勢が求められるため、教師間のコミュニケーションは自ずと密になり、同じ方向に向かわざるをえません」と言う。前期・後期の初めに行う学年会では、必ず教師全員で「西農三訓」の基本的な考え方を確認、全校で意思統一を図る。また、個々の教師で指導に差やぶれが生じないよう、学年会を月1回実施。全校朝会のあとは学年ごとに伝達事項を確認したり、気になる生徒の情報交換をしたりする。職員室の机は学年ごとに固めて配置し、日常的に情報を交換できるように心がけている。
 全校体制で厳格な生徒指導を徹底する西条農業高校。同校にとっての生徒指導は、生徒と教師が厳しさを分かち合い、共に学び合う真剣勝負の場なのだ。


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